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停戦と攻撃を繰り返しながら、いまも収束する気配が見えないイスラエル・ガザ戦争。しかし、イスラエルの本当の敵は、ハマスではないという。異様なまでの警戒心から垣間見える、イスラエルにとっての“ラスボス”とは?※本稿は、東京大学先端科学技術研究センター准教授の小泉 悠、日本大学危機管理学部教授の小谷 賢『戦闘国家 ロシア、イスラエルはなぜ戦い続けるのか』(PHP研究所)の一部を抜粋・編集したものです。
イスラエルの根底に流れる
ユダヤ教聖典の過激な一節
小泉悠(以下、小泉):イスラエルは先制攻撃を重要な選択肢として位置づけていますね。
そもそもイスラエルは地理的に、北はレバノンとシリア、東はヨルダンとパレスチナ自治区のヨルダン川西岸地区、南はエジプト、西はガザ地区と、広範なアラブ諸国・地域に囲まれている。
さらに、イスラエルの人口は1000万人弱で神奈川県と同じくらい、面積は四国よりやや小さい程度しかない。先に攻撃を受けると致命的なダメージになりかねないわけで、できることは事前に手を打っておくことで国の安全を確保してきたのでしょう。
ただ、こうした考え方や行動原理は軍事的な論理だけで導き出されるのでしょうか?よりイデオロギー的な背景があったりしますか?
小谷賢(以下、小谷):ユダヤ教の聖典の1つであるタルムードの一節に「誰かが殺しに来たら、立ち向かい、相手より先に殺せ」という文章があります。
これはイスラエルの政治指導者や軍、情報機関幹部が正当防衛を主張する際によく用いられるんです。「自分たちに災難が降りかかるのを、二度と手をこまねいて待たない」という意志が強く表れています。







