低価格志向が強まり、海外生産で対応するケースが加速して、日本の経済成長はますます厳しい状況が見えています。これでは給与や賞与が伸びる環境にはありません。

 経済成長や給与、賞与の伸びを考えるための共通キーワードは付加価値です。経営においても「付加価値を高めよう」という目標を掲げることがありますが、付加価値の意味があいまいなために、付加価値を高めるためにどうしたらいいかという基本的な行動をハッキリ考えられないケースが多いのではないでしょうか。

 付加価値がいくらか測定できないケースもあります。今回は、付加価値を簡単に見抜くコツ(計数感覚)を紹介しましょう。  

付加価値を捉える方法

 一般的にはどのように付加価値を考えたらいいでしょうか。

 街角のカフェで、300円のコーヒーを注文しました。このコーヒーの付加価値はいくらでしょうか。

 付加価値というとわかりにくいので、コーヒーの原価はいくらでしょうという質問に変えれば、多くの人が答えることができるものです。少ない人で30円(原価率10%)とか、多い人では100円(原価率33%)と答えるでしょう。

 なぜこのような数字になるかを聞いてみると、「コーヒーの原価って、豆と水でしょう」とほとんどの人が指摘します。つまり多くの人にとっては、材料費が原価なのです。少し勉強して財務の知識がある人なら、「人件費やその他の経費があるから、原価はもっと大きい。だから原価は150円くらいだよ」というでしょう。どちらの考え方も正しいのです。

 会計知識のある人は、コーヒーの原価を全部原価(材料費、労務費、製造経費の合計)で捉えようとし、これが制度会計が要求する製造原価です。これに対して材料費だけで考える方法は、直接原価とか変動費と呼ばれるものです。材料費は、コーヒーが1杯販売されるごとに発生するという意味で変動費です。一般の人は変動費で、原価を考える傾向にあるのです。

 TKC経営指標で、喫茶店の限界利益率(黒字企業平均)を見ると、69.6%となっています。食事原価なども含まれるため、コーヒーの原価率(変動費比率)は30.4%より低いはずで、原価は約91円(300円×30.4%)より低いということになります。一般の方の勘も間違いではないようです。

変動損益計算書で付加価値の管理をしよう

 コーヒーの原価(変動費)と付加価値(限界利益)をつかむ考え方を応用したものが、変動損益計算書です。