上場企業の中間配当(2009年4月~9月期の配当)が前年同期比で1兆円減る予想です。政治の世界では、民主党が2兆5000億円を超える今年度の補正予算の見直しを発表しました。これらに共通するのは、成果配分の見直しという点にあります。

 この場合の成果とは、企業においては利益であり、国家においては税金です。私たちは、企業や個人の活動を通じて成果を生み出し、税金を支払います。この税金の配分を決めることが政治の役割ですが、この配分の考え方まで大きく変わろうとしています。

 今回は、企業の成果とは何かについて考えてみましょう。

利益時代の終焉

 企業の成果は利益と考えることが良いのでしょうか。利益とは、企業が一定期間(四半期、半期、1年)で生み出した儲けです。世界中を大不況に陥れたリーマンショックは、利益を追求しすぎた結果であるといわれています。

 利益は法的には株主に帰属します。利益を追求したということは、株主が成果配分の中心にあったことを意味します。株主至上主義とでもいったらいいのでしょうか。90年代後半からこの傾向は広がり、2000年以降に更なる拡大を続け、2008年9月に頂点に達して、破綻したのです。

 利益を成果とする場合の問題の一つは、費用を削減して、利益をひねり出すという考え方に陥る可能性があるという点です。費用の削減が、3K費(交通費、交際費、広告費)にとどまっているうちは、大きな問題にはなりませんが、人件費に及んだときに、社会問題化しました。前回の第11回では、「削減が容易でないコスト、削減してはいけないコスト」を考えていますのでぜひご覧ください。

 このような経験を経てくれば、さすがにこれまでの考え方を続けることに疑問を感じませんか。利益を成果とする経営の仕組みを変える必要があるかも知れません。

 国際会計基準では、当期純利益ではなく、包括利益という概念を導入し、利益の考え方をも変えようとしています。当期純利益を基準に株主配分を考える時代は、変化するかもしれません。持ち合い株式などの評価損益や年金の積立不足額などを損益に一挙を算入することも視野に入れて、日本的経営を揺さぶっています。

 では、どのような指標を成果とすべきでしょうか。

キャッシュフロー経営の問題点

 「利益が問題なら、キャッシュフローでは?」と考えた人は多いのではないでしょうか。2000年3月期より導入されたキャッシュフロー計算書により、キャッシュフロー経営というキーワードがよく使われるようになりました。