鳩山首相が気候変動サミットで表明した、温暖化ガスの中期目標25%削減目標に関連して、新たな企業と家計のコスト負担の可能性が話題になっています。前回取り上げた「最低賃金1000円が実現した場合の中小企業への深刻な影響を業種別に検証」でも、コスト増の影響はかなり深刻でした。
今回は、コストの本質的な意味を考えながら、コスト増をもたらす経営環境への対応のポイントを考えてみましょう。
真に削減が容易でないコストとは何か
すぐにでも削減できるコストとしてよく知られているのは、3K費と呼ばれる交通費、交際費、広告費です。これに光熱費と給与賃金を加えると5K費となりますが、光熱費は3K費と同様に削減しやすいコストになります。
しかし、この1年で聖域の給与賃金にも削減の嵐がやってきました。給与賃金などの人件費は、本来、削減が容易でないコストの代表でした。正社員のリストラを行えば、かなりの抵抗と社会的な批判が待っています。非正社員の削減でも、派遣切りということばで社会問題化しました。人件費は容易に削減できない、いや、安易に削減してはいけないコストという認識が日本では一般的だからです。製薬会社などのメーカーでは、研究開発費も削減できないと指摘する人もいるでしょう。将来の利益を生み出す源泉だからです。
しかし、経営者にとって、真に削減が容易でないコストは、人件費や研究開発費ではありません。昨年来の経済危機において、人件費や研究開発費は、経営者の決定で、短期的に削減可能でした。企業内部で決定できるからです。
では、真に削減が容易でないコストは、何でしょう。
それは、商品仕入原価、材料仕入原価、外注費などの本業に関連する直接費である変動費です。これらのコストの本質は、外部の利害関係者との交渉や経済環境の変化に依存し、経営者においても容易にコントロールできないという性格を持った費用だからです。(もしコントロール可能だとしたら、コストリーダシップがとれる一部の大手企業に限られます)
これらを削減する場合、短期的な努力では削減できません。業務提携や経営統合によって規模を拡大し、部品の共通化で材料費の低下を狙う方法や、大量一括仕入れ、PB商品開発などによって商品仕入原価を引き下げる方法などを考えてみてください。直接費である変動費は、戦略的な取り組み、中期的な取り組みなくして、削減は難しいのです。