景気回復局面になったと内閣府は表明しました。しかし、景気回復実感はありません。むしろ、景気後退の危惧さえ感じます。パラダイムの変化によって、価値観が変わった現在、成長の種を見つける生みの苦しみが必要なので、その危機感が、楽観論を打ち消すのでしょう。
前回(第13回)は、付加価値を簡単に見るコツと付加価値計算書としての変動損益計算書を紹介しました。付加価値という成果は、利益や給与の原資になります。今回が約半年間の連載の最後になりますが、最終回は、付加価値の視点で、経営を総点検してみます。そして、あなたの給与が適正かを考えるコツも紹介します。最後まで、ぜひ読んでみてください。
給与や利益は、
付加価値がないと生まれない
付加価値は、ざっくり言えば、前回のような捉え方がありますが、今回は経営分析で使われる考え方を紹介します。一般的に付加価値を捉える方法は、2つあります。加算方式と控除方式です。
加算方式は、付加価値が、結果として付加価値を生み出すために必要な資金や労働を提供した経営資源に対して分配されることに注目して集計する方法です。付加価値は、ヒトモノ、カネによって創り出されます。その付加価値は、給与や家賃、配当、支払利息、税金などとして利害関係者に分配されます。利害関係者とは、従業員、資本提供者(地主、金融機関、株主)、国や地方自治体です。よって企業が生み出した付加価値は、人件費+賃借料+減価償却費+支払利息+当期純利益+税金で把握します。粗付加価値とも呼ばれます。
控除方式は、売上高から、付加価値とならないものを控除して求めます。たとえば売上高-(材料費+外注加工費+商品売上原価)です。この付加価値は、加工高とも呼ばれますが、控除項目は変動費なので、限界利益(売上高-変動費)を示しています。限界利益が、人件費や利益として、使われ(分配され)ます。
経営分析では、上記2つの方法で、付加価値を捉えて、分配内容を分析するのです。
前回紹介したコーヒーの付加価値の捉え方やスーパー銭湯(極楽湯)の変動損益計算書は、控除方式の付加価値の捉え方です。企業の経営管理では、損益計算書全体を網羅した、変動損益計算書を使うことをお勧めします。
これに対して、加算方式の付加価値で代表的なモデルは国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)や国民総所得(GNI:Gross National Income)です。GDPは、日本国内で生み出された付加価値の合計で、GNIは、GDPに海外からの配当や利子収入を加算したもので、企業の海外展開や外国証券などへの投資を考慮した指標として、最近は重視される傾向にあります。