内藤に迎え入れられて入室してきた曾根崎雄也は、背後にもうひとりの男を伴ってきた。巨体で強面の曾根崎とは対照的に、こちらの男は小太りでどこかユーモラスな雰囲気がある。
「久しぶりだな、田島」
 その背後の男のほうに、半沢は声をかけた。「君も担当チームだったのか」
「こちらこそ、ご無沙汰しております」
 丁寧にお辞儀をした男の名前は、田島春。何年か前、短い間だったが、半沢と同じ部署にいたことのある男だ。見かけ通りの気の良い男だが、仕事はできる。
「部長から、担当替えを申しつけられて参りました」
 不機嫌そのものといった表情で曾根崎は切り出すと、「おい」、とぶっきらぼうな口調で田島に顎をしゃくった。
「こちらが帝国航空のファイルになります」
 田島が分厚いクレジットファイルをテーブルに置く。「関連資料は膨大ですので、それは後で」
「君もご苦労だったな、曾根崎君」
 内藤が余裕の表情で話しかけたが、曾根崎はにこりともしない。「途中で離れるのはさぞかし無念だろうが、まあ後は我々に任せてくれ」
 難しい顔をしたまま、小さく頷いたのみだ。今回のことは、曾根崎にしてみれば事実上の、〝クビ〟を宣告されたのに等しい。にこやかに談笑する気分でもないだろう。
 同時に、内藤は口にしなかったものの、この話が単なる担当替えに止まらないことを、半沢は悟っていた。

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