表向きのコミュニケーションでは改善せず
窮余の策で導入された“2ちゃんねる”

 もちろん、仕掛けとしてのコミュニケーションの機会は、数多く設けられていた。N社とE社のダイアログ、マネジャーとメンバーのラウンドテーブル、社内報による情報共有、毎週のラジオ朝礼、制度統合のアクションプランの整理、スキル統合のトレーニングプログラムの実施、マインド統合のプログラム――。

 中には効果を奏したものもあるが、N社とE社間の直接のコミュニケーションは一向に改善されなかった。見解の相違は拡大する一方だが、面と向かってのミーティングなどの場では、お互い紳士的な姿勢を崩すことはしない。N社はE社のこれまでのやり方を尊重する姿勢を示し、E社はN社の新しい方針を理解した。無論、これは単なる“フリ”。かくして、N社内、E社内でそれぞれ、不満をため続ける状態が続いていた。

「もうN社内、E社内で不満を貯め続けることは、たくさんだ!直接コミュニケーションをとれないなら、ネット上で議論する場をセットする」。制度、スキル、マインドの統合プロジェクトを推進するプロジェクトリーダーは業を煮やして宣言し、“2ちゃんねる”の仕組みを導入することとなった。

 仕組みは単純である。日々の業務を推進していく上で、疑問に思うことや気になることを、誰もが、社内“2ちゃんねる”の掲示板に「質問」として投稿できる。これに対して、追加の「質問」や「意見」や「回答」など、言いたいことを、これも誰もが投稿できる。「質問」だけでなく、「好事例」を投稿することもできる。

 導入にあたっては、いくつかの反対意見があった。最大の懸念は、実際の“2ちゃんねる”のように場が荒れ、炎上し、収拾がつかなくなるのではないかというものだった。これに対しては、投稿は実名で行い、内容は建設的な質問や意見に限るという条件を付した。管理者は不適切発言に対して、指導したり、修正したり、削除することもできるというルールとした。

 そもそも利用者がいるのかという声もあったが、これは杞憂だった。導入にあたっては、全国十数ヵ所の地域オフィスに勤務する十数名のトレーナー間でテスト的に実施、順次、全国の数十名のセールスマネジャーへ、その後、やはり数十名の本社マネジャーへと、テスト範囲を拡大し、最終的には全国1000名以上の営業社員へと参加者を拡大していく。参加者数と投稿数は、十数名による投稿500件、100名による1000件、500名による2000件というように、数ヵ月で増大していった。