「通信を取り巻く環境の変化もあって生まれた規格ですが、技術的には5年前でもできたかもしれません」とは、ソニーのオープンイノベーション部門「Transfer Jet事業化推進部」の小高健太郎統括部長。
 
 Transfer Jetは、まるで逆の発想から生まれた。遠く離れたところまでデータを飛ばすのではなく、数センチ離しただけで通信が途切れるように作っているのだ。注目するべきは技術開発よりも「発想の転換」だ。

 早い話が、機器をタッチすることでデータがやりとりできるようになる――使い方が限定されるのでセキュリティのリスクが減り、認証もわかりやすい、ということ。デジカメやビデオの写真を取り込むだけでなく、友達同士で携帯電話の写真をやりとりするといったファイルの交換も気軽にできるわけだ。また、パーツのサイズも小さく、普及すればコストも抑えられる。来期にも実装した製品が登場しそうだという。

デジカメや携帯のデータを「簡単転送」
コストやパーツセーブも強みアリ

デジカメや携帯に新時代到来!?<br />新無線規格「Transfer Jet」の利便性
ソニーが描くのは、タッチでデータを転送する「ユーザー文化」。シルエットの女性は、広告に携帯電話をタッチさせて情報を取り込んでいる。

 実際に稼働しているデモを見せていただくと、なんともあっけない。ビデオカメラを通信アダプタの上に載せると、テレビでビデオが再生されるのだ。従来の機器との違いは、ケーブルをつないでいないことだけだ。

 だが、実はこれ、大変な可能性を秘めていると思う。僕自身、いろいろな機器をパソコンやテレビにつなぐために、数種類のケーブルを使い分けなければならずに、非常に面倒な思いをしている。むろんケーブルとて安くはない。ついこの前まで、テレビとパソコンなどをつなぐHDMIケーブルは3000円以上もしたのだ。

 今後、Transfer Jetが普及すれば、機器接続のための「ケーブルの呪縛」から解放されるのだ。結果として、できることがシンプルでわかりやすいからこそ、うまくいけば一気に普及する可能性も高い。

 小高氏は、「タッチしてデータをやりとりするスタイルを含めてユーザーに訴求したい」と考えている。だが僕は、ケーブルのコストやパーツセーブだけを考えても、ビジネスチャンスは大きいと思っている。