ウェザー・リポートは、1971年結成。『天気予報』などという風変わりな名前ですが、実は疾風怒濤の1960年代のジャズを牽引した二人の猛者によるバンドです。一人は、サキソフォン奏者のウェイン・ショーター。もう一人が、キーボード奏者のジョー・ザビヌルです。二人ともマイルス・デイビス楽団(本コラム第3回参照)の同窓生でもあります。特に、マイルスが生楽器による伝統的ジャズから決別し、史上初めてジャズを電化させた時の鍵となったのがザビヌルとショーターでした。それぞれで充実した作品を発表しており、十分にソロでやっていけるはずなのに、その二人がバンドを結成しようというのです。

 何故、新しいジャズを創始するのに、一人ではなかったのでしょうか?

 新しい音楽を始めることは容易ならざる道です。しかもジャズの世界は、いずれ劣らぬ天才・鬼才・異才・秀才が、己の創造力と演奏力を競う極めて競争の激しいところです。更に、ジャズの醍醐味はバンド形式による即興演奏の応酬にあるので、音楽的同志がいれば鬼に金棒です。

 その点、この二人はマイルス・デイビスが実現させたジャズの電化革命を牽引した共通の体験があります。ジャズの未来像を共有していたのです。

 ザビヌルとショーターが一心同体となれば、1+1>2の無限の可能性が広がることは明らかで、ウェザー・リポート結成は、二人にとっては必然でした。

 二人が抱いた理想と決意があります。それは、明日の天気を予報するが如く、新しいジャズの行方を自分達が予言する、つまり新しいジャズを創始する、というものです。バンド名を冠したデビュー盤「ウェザー・リポート」(写真)は、そのジャケット写真の如く、未だ見たことも聴いたこともない音宇宙が拡がっています。 

バンドメンバーの模索

 それでは、ウェザー・リポートは順風満帆だったのでしょうか?

 その答えは、イエスでもあり、ノーでもあります。

 イエス。矢継ぎ早に発表されたアルバム群は、デビュー盤を筆頭に常に時代に先駆ける革新的な音楽でした。音楽的な充実は素晴らしいものがあります。

 ノー。ザビヌルとショーターは、俺たちならば、もっと凄い音楽ができるはずだ、とも思うのです。何かが足りない、との思いを強くするのです。

 ジャズの本質はチームプレーと革新性にあります。勿論、その前提になっているのは、演奏家としての確固たる自分です。その上で、とびっきり刺激的で鋭角的な非妥協的なチームプレーが可能になります。バンドメンバーが自己主張し合い、お互いを鼓舞し高め合い、ついて来られない奴はバンドから去れ、というものです。