予備校「SKY」戦争の顛末

 私の大学受験は共通1次とともに始まった。現役では志望校に入れず、地元の河合塾で浪人生活を送った。ちょうどその年に、代ゼミが名古屋にやってきた。

「有名講師が新幹線でやってくる」

 これがウリ文句だ。

 小田実をはじめとした有名講師陣が、東京から新幹線に乗って名古屋駅裏にある校舎に授業をしに来るというのだ。

 校舎も河合塾に比べれば綺麗だった。もちろん新築で、1階にはエスカレーターがあり、女性職員がきれいな立ち姿で浪人生を迎える。これは思春期の男子生徒を刺激した。

 代ゼミの名古屋進出は、河合塾が駒場に校舎を作り東京進出を果たしたお返しである。SKYと呼ばれた大手予備校3社による予備校戦争の発端だった。

今回閉鎖対象となった池袋校は、典型的な私大文系向けの教室割りだった

 その後、各地で局地戦が展開されていく。池袋では、河合塾が狙っていた土地を、おカネを積んで代ゼミが横からさらっていった。これが今回閉鎖される予定の代ゼミ池袋校舎である。

 ピーク時、代々木地区だけで1万5000人もの浪人生がいたのだが、今その姿は消えてしまった。名前は「代々木ゼミナール」のままであっても、新宿駅近くに26階建ての代ゼミタワー(08年)が建ち、それと同時に代々木の校舎は閉鎖していった。かつて代々木の校舎には300人教室がいくつもあったが、代ゼミタワーでは最大規模の教室でもその半分も机がない。代わりに、個別指導ブースがいくつも設けられている。

 受験生時代からシームレスに予備校と付き合っている私にとって驚くようなことはない。しかし、受験生時代からこれまで予備校と離れていた人たちにとっては驚きと隔世の感があることだろう。

 次回以降、“代ゼミショック”の本質が「校舎」(不動産事業)ではないこと、教育産業の抱える構造的な問題、そして将来展望へと話を進めていきたい。

※第2回は9月3日(水)公開予定です。