最終的に「プレパッケージ(事前調整)」型の法的整理を用いた再生を目指した日本航空(JAL)の再建策は、お手本の米ゼネラル・モーターズ(GM)の例とは似ても似つかない泥縄方式に陥った。

 原因は、閣内で「子ども大臣」と揶揄された前原誠司国土交通大臣の常軌を逸した未熟さと、手段に過ぎない法的整理をゴールと履き違えた企業再生支援機構の幹部たちの素人ぶりにある。

 JALはまだ正式な会社更生法の適用申請というステップに辿り着いたわけではない。しかし、事情通の間では、「裁判所から更生決定というお墨付きを得るのは困難だ」「第2次破綻しかねない」と懸念されているのが実情だ。経済政策におけるこれほどの失政は、明治維新によって、わが国が近代国家に生まれ変わって以来、他に例がないのではないだろうか。

3年後に1157億円の黒字に
転換するというバラ色の絵

 まず、筆者が入手した再生計画の原案をご紹介しよう。「Ivy再生の方向性」(「Ivy」は機構が付けたJALのコードネーム)とのタイトルが付けられたもの。実際は、かなりの部分をJAL自身に作成させたという。この再生計画原案は、前原大臣が12日、みずほコーポレート、三菱東京UFJ、三井住友の大手3銀行首脳から債権カットなどの大筋合意を取り付けた際、その前提になったとされている。

 大別すると、「Ivy再生の方向性」の柱は4つある。その中心は、財務(バランスシート)の改善だ。具体的には現在、JALは、8676億円の債務超過状態に陥っているが、企業活動を再開できるように、機構による3000億円の資本注入のほか、民間銀行、政策投資銀行が参加する総額7300億円の金融支援の実施によって1624億円の資産超過状態を作り出すという。

 そのうえで、目指すのが収支の改善だ。JALの営業収支は、2009年度に2651億円の連結赤字だったが、これを3年後の2012年度に1157億円の黒字に転換するとバラ色の絵を描いている。

 そうした収支改善の原動力と期待されるのが、事業(ビジネスモデル)における大幅なダウンサイジングとネットワーク再構築、コア事業への集中などだ。これらの点は重要なので詳述しておくと、(1)26の不採算路線からの撤退(内訳は国際が14路線、国内12路線)、(2)燃費の悪い航空機(B747-400を37機、MD90を16機)をすべて退役させて、代わりに小型機33機、リージョナルジェット機17機を導入する、(3)5万1862人に及ぶグループの人員を3万6201人に減らす、(4)需要の質・量に応じ、低コスト運航子会社を活用したり、国際的な航空連合のアライアンスを活用したりする、(5)ホテル、旅行事業などの子会社の売却、清算も進める――という。