谷垣氏起用の理由は
安倍路線と異なる思想への恐れから?

 谷垣氏起用にはさまざまな理由があるだろう。“長老”を尊重する姿勢によって無用の批判を封じる思惑もあるかもしれない。

 また、年末には消費税10%への引き上げも決断しなければならない。

 消費税10%の三党合意の責任者として、谷垣氏は、引き上げに強い使命感を抱いている。自民党内の引き上げ先送り論も、彼が抑えてくれるはず。だから、幹事長起用には財務省からの要請もあったかもしれない。

 しかし、首相には、それらと同時に、安倍路線とは異なる政策、思想の流れが強まることを恐れる気持ちもあったのではないか。

 谷垣氏は、保守本流と言われた宏池会のプリンスであったし、宮沢喜一元首相の秘蔵っ子であった。

 宏池会は、①憲法を尊重する、②先の戦争を間違いとする歴史認識、③言論、表現の自由の徹底、④経済と国民生活の重視などの政策的、思想的潮流を形成してきた。

 この流れは安倍首相とはかなりの隔たりがある。もし、安倍路線が行き詰れば、再び大きな政策潮流として浮上する可能性もある。その際の止まり木は谷垣氏になりかねない。

 前述の例えで言えば、単なる運転手の交代より、車の向かう目的地の変更を迫ることになるから重大である。その芽を早く摘んでおく、火種を今のうちに除去しておく、そんな思惑が首相にあっても不思議ではない。

小渕優子経産相には
エネルギー政策、TPP軌道修正を期待

 あえて、今回の人事で評価するとしたら、小渕優子氏の経産相起用である。信頼できる有数の人材であることは疑う余地がない。無用のパフォーマンスや出過ぎたところもなく、自然体で職務を遂行してきた彼女が主要閣僚に起用され一段と成長することを期待している。

 特に、エネルギー政策とTPPについて閣僚や専門家の意見に素朴な疑問を呈して軌道修正を実現することを期待している。

 安倍首相はこれから第二段落に入るが、これを機会に何かと“過剰防衛”に見える今までの姿勢を変えることが、政権への信頼を強めることを肝に銘じてほしい。