環境整備は、
徹底的に「捨てる」ことから始める

「環境整備」の「整(整える)」には、二つの意味があります。

「整理」と「整頓」です。

◆「整理」=捨てること(戦略)
……必要なものと不必要なものを分け、徹底して捨てる。やらないことを決める。

◆「整頓」=そろえること(戦術)
……物の置き場を決め、向きをそろえ、いつでも、誰でも使える状態を保つ。

「整理」とは、端的に言うと「捨てる」ことです。
 環境整備は、徹底的に「捨てる」ことから始めます。

 会社には、いらないものがたくさんあります。
 武蔵野では、個人の机を捨てました。机の引き出しごと、中身も一緒に捨てさせました。 

 書類に限っては、自宅に持ち帰ることを許可しましたが、一人の例外もなく、3年以内に市の焼却炉の煙になりました。
 机を引き取りにきた回収業者は、「会社がつぶれた」と思ったそうです。

 それからは、引き出しのない机を社員が共用で使っています。
 営業の管理職は、2009年から椅子も捨てました。私の机にも、椅子はありません。

 私は、メールの整理も徹底しています。「受信メールを読んだら、すぐに削除する」ようにしています。受信フォルダには、ほとんどメールは残っていません。

経営は「やること」より
「やらないこと」を決めるのが大事

 環境整備で「捨てる」のは、在庫やオフィス備品だけとは限りません。
 いらない「仕事」も捨てています。

 多くの社長は、「この仕事も可能性があるかもしれない」「この仕事を断るともったいない」「この仕事はもう少し続けよう」と未練を残す。
 だから、うまくいきません。

 あれもこれもそれも手を出しているうちは、成果が出にくい。
 自社が提供しているサービスのうち、お客様の需要が最も高いものを見極め、経営資源を集中させる。そして、その他のサービスは縮小するか、あるいは、潔く切り捨てたほうが業績は上がります。

いくつかある選択肢の中から「やらないこと」を決めていくことを「戦略」(戦略決定)と言います。

 経営は、「やること」を決める前に「やらないこと」を決めることが先決です。わが社の場合なら、「同じお客様に、繰り返し売る」こと以外はやりません。

「売ったらそれでおしまいの事業はしない」

「鉄砲は売らずに、弾を売る」

 のが、私の戦略決定です。

 鉄砲は、単価は高いが、一度買ったらそれでおしまいです。壊れるまで次を買うことはない。しかし、鉄砲を買った人は必ず弾を使い、鉄砲を利用し続ける限り、補充します。

 ということは、「鉄砲を売る」のをやめたほうが、会社の利益は安定するのです。