関西電力が福井県にある美浜原子力発電所1、2号機の廃炉を検討していることが明らかになった。どちらも運転開始から40年超と設備が古く、原子力規制委員会が定めた原発の運転制限に引っ掛かってくるためだ。40年を超えた原発でも一定条件を満たせば延長が可能だが、関電は廃炉の方向で検討に入ったという。

美浜原発の廃炉検討は高浜原発の再稼働への動きと“セット”といえる(写真は関西電力美浜原発)
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 だが「廃炉への道筋はもっと早くに見えていたはずだ」と橘川武郎・一橋大学教授は指摘する。

 なぜ、今だったのか。背景には、関電が電気料金の値上げを再度打ち出す必要に迫られているという“焦り”がある。関電のように原発依存度が高い電力会社は、現在原発の代わりに使用している火力発電用の燃料費が膨らんでいる。原発の再稼働が遅れるほど、電気料金の値上げにも手を付けなければならない構図にあるのだ。

 それを解消すべく、関電は同じく福井県にある高浜原発の3、4号機の再稼働に向け、規制委の審査を申請している。だが、「この2基が再稼働したとしても、財務状況は厳しい」(電力業界関係者)というのが実情。そのため、国民の反発が必至の原発再稼働、電気料金の値上げを認可するのと引き換えに、「老朽原発を廃炉するかどうか、早期の判断を経済産業省が求めだした」と関係者は明かす。

 これまで廃炉の決定は、原発事故の当事者である東京電力が福島第1原発の6基について下したのみ。だが、橘川教授は「福井県は昨年秋に廃炉・新電源対策室を設置しているのだから、(関電は)もっと早くに判断できたはずだ」と苦言を呈す。原発立地自治体自らがこうした専門部署を設けたのは初めてで、いずれ迎える廃炉をにらんだ動きは、もっと早くからあったというわけだ。