人見知りでコミュニケーションに苦労し、取材がイヤで逃げ出したかった過去。これらを乗り越えてたどりついた境地――本音を引き出すことで、人とのつき合いが変わっていくことを中心に、序章後半は展開していきます。
序章前半は、こちらです。
第4回「なぜ、僕は人が知らない情報を集められるのか?」
最初に学んだこと「喜怒哀楽を聞いてこい」
皆さんが社会人になって最初に教わったことは何ですか? ビジネスマナー、営業の仕方、企画書の書き方、接客方法など職業ごとにいろいろあると思いますが、新聞記者となった僕がデスクから最初に教わったのは、「喜怒哀楽を聞いてこい!」ということでした。
日々、さまざまな事件や事故が発生し、そこには何かしらの感情が落ちています。そして、僕ら記者は拾い上げた感情をもとに記事を書き、受け手の皆さんへと発信します。
しかし、新米記者だった僕は現場に落ちていたであろう喜怒哀楽を見つけようともせずに、ただこの目で見てきたままを記事にしていました。そして、その記事を読んだデスクから、「読んだ人が反応しない記事には意味がない」とバッサリ斬り捨てられたのです。
まだ未熟だった僕はデスクに向かって、「だって、こんなことしかしゃべってくれなかったんですよ」と、生意気にも口答えしてしまいました。この態度、今の僕がもしデスクだったら、はっきり言ってムカつきます(笑)。
そんな僕にデスクは、「それはお前の質問が悪いからだ。何かを引き出すような質問ができなかったのなら、相手を怒らせてみろ」とアドバイスをしてくれました。
ちょっと落ち目になってきたタレントさんがいて、僕のほうから「最近、テレビで見かけませんよね?」という質問をしたとしましょう。どう考えたってかなり不躾(ぶしつけ)質問です。
相手は「失礼だ」と怒ってしまうか、もしくは「そうなんですよ。仕事がどんどん減ってしまって……」と泣き言を漏らすかでしょう。
ただ、どっちに転んだとしても、ドラマチックな展開が待っているはずです。皆さんも怒らせることをやってという意味ではなく、喜怒哀楽でしか人は感情を表現できないということを言いたいのです。
その感情を極大化することで、心に秘めた思い=本音が出てくるのです。
今のあなたは何に一番興味をもっていますか? ビジネス、人間関係、恋愛、結婚、マネー、将来のこと……、人それぞれの回答があるでしょう。
でも、広い意味で考えると人間が一番興味をもっているのは人間。
いつの時代も、その人間がもつ喜怒哀楽に興味があるのです。
もっともっと喜怒哀楽を引き出してやろう、それが本音を聞き出す原点です。