部下から意見を求められると、すぐ「こうしたらいい」と答えてしまう上司が多いようです。敏速に明解な指示を下すことが、有能なマネジャーの条件のひとつだと考えているからではないでしょうか。
もちろん、そうした判断が必要な時も多くあります。でも、意見を求められたら間髪を入れずに指示を出すということを続けていると、部下は「自分から考える」ということをしなくなります。
部下から意見を求められたら指示を出すのではなく、「部下自身がどう思っているのか」を質問してみましょう。上司に意見を求めにいくことは指示をあおぐことだと思っていた部下が、自分なりの答えを求められるわけですから、こう問いかけられた部下はとても新鮮に感じると思います。さらに、仕事に対するコミットメントが違ってきます。
ただし、「君はどう思うんだい?」「君ならどうしたらいいと思う?」と問いかけても、すべての部下が答えてくれるとは限りません。それに、返ってきた答えがあなたの求めているものと違っていることもあるでしょう。それでもいいのです。上司は問いかけ続けてください。
大事なことはあなたが望むような答えが返ってくるかどうかではなく、あなたが部下に意見を求めたという事実です。それは、「お前の意見を真剣に聞くぞ」「お前の存在にいつも関心をもっているぞ」というシグナルを部下に送っていることにほかならないからです。
自立心が旺盛な部下なら積極的に自分の意見を述べるでしょうし、たとえ指示をあおぐだけでよしとしてきた部下でも、少しずつ「自分ならどうするだろう」と考えるようになるでしょう。そうなると、部下は自発的に活き活きと動き出すようになります。
◎ケース1
部下「C社の見積もりはどのくらいに設定したらよいでしょうか?」
上司「あそこはうちにメインクライアントだから、思い切って通常メニューより低めに設定したほうがいいだろうな」
◎ケース2
部下「C社の見積もりはどのくらいに設定したらよいでしょうか?」
上司「君ならどのくらいに設定したらいいと思う?」
部下「そうですね。今回の受注をきっかけにさらに大型の受注に結びつけるためにも、他社より低めに設定したほうがいいと思っているんですが」
上司「新たな大型受注の手ごたえがあるんだね?」
部下「実はですね。先週、先方の部長から新しい工場の建設計画の話をうかがいまして……」
この2つの会話を見てもわかるように「君はどう思う?」と聞くだけで、質問はどんどん広がっていきます。
もし、そんな悠長なことをやっている余裕はないと考えているとしたら、それは問題ではないでしょうか。逐一部下に答えを出さなければ動かない組織よりも、部下が自分で答えを見つけて自発的に動く組織のほうが、はるかにスピード経営にかなっていると思います。