褒められて嬉しかったことも、楽しかったデートも、わずか1時間で半分は忘れてしまうということです。「デートから帰ったら、『今日は楽しかった』とメールをしよう」とモテ本が説くのには、こうした理由があるのです。「快」の感情を強化するねらいですね。
褒めたり、ご馳走したりしたほうは、「快」の感情を与えるまでにいろいろプランを練ったり、「してあげた」という意識があるので、それでも記憶に残りやすいのですが、してもらった側は受け身のため、してあげた側が思うほど覚えていないものです。
だから「快」の感情はコンスタントに与え続けることが大切です。やがて「快」の感情があなたへの「信用」に変わっていきますので、そこまで努力し続けなければなりません。
頼み事やネガティブな指摘は「信用」の貯金が貯まってから
信用の貯金のことを「イデンオシンクラシー・クレジット(個人の信用)」といいます。頼み事や注意などは、信用の貯金が貯まって「十分に信頼関係が築けたな」という段階ですべきです。
同じような頼み事や指摘でも、誰が言うかによって、相手の反応は違ってきます。「何」を伝えるかより、「誰」が伝えるかのほうが、はるかに重要なのです。
「誕生日にシャンパンタワーをやってくれない?」と頼まれても、相手が会ったばかりのホストなら「冗談じゃない」と怒りがわきますが、これまでたくさん楽しませてくれたホストが相手なら「いいよ」とOKするはずです。いつも自分のリクエストに応えてもらっているという信用の貯金があるからこそ、多少の無理をしてでもお返ししてあげたい、という「好意の返報性」の心理が働くからです。
また、いつも自分を気にかけ、感謝の言葉をかけてくれる上司からの注意は素直に受け入れられますが、異動してきたばかりの上司から問題点を指摘されたら「何もわかってないくせに」と反発を感じるはずです。
相手に聞く耳をもってもらうには、まず信用されることから始めましょう。一見、遠回りのようですが、何度もアプローチしてシャットアウトされてしまうより、はるかに効率的なやり方といえます。
相手が「イエス」と言いやすい”言い訳”を用意する
モノを買ったり、この人と付き合おうと決断したりするとき、人はストーリーを必要とします。ストーリーとは、言い換えれば「言い訳」「大義名分」「後付けの屁理屈」ともいえます。優秀な営業マンや異性にモテる人は、相手に気持ちよく言い訳をさせてあげる達人です。
たとえば、女性と飲みにいき、終電が迫っているときに、モテない男性は、「もうすぐ終電だけど、どうする?」と女性側に判断を委ねてしまいます。尋ねられた女性側からすると、「帰らない」と言えばまるで自分からお泊りしたいと言っているようで軽く見られそうなため、「帰る」としか答えようがなくなります。
モテる男性は、終電の時間が過ぎてから「終電なくなっちゃたね」と、あたかも本当にうっかり終電を逃してしまったフリをします。こうして女性に「終電がなくなったから、しかたなくお泊りした」というストーリー=言い訳を用意してあげるのです。