経営者の人間力が
投資の基準
編集部 先ほど、杉本さんがどん底でも明るかったというお話しがありましたが、お二人が起業家に投資する時の基準を教えていただけますか。
杉本 私はやはり失敗の経験もあるので、本業である不動産関連の業種に絞ってますね。組織の作り方や仕入れや融資の人脈といったノウハウを注入できるからです。あとは、藤田さんからの教えでもあるんですけど、やはり社長の人物が重要です。コミュニケーション能力が高くてポジティブで、少しはしたたかな部分をもっているような。やはり、人間力がポイントです。
藤田 杉本くんへの投資は、一度失敗してしまったけどなあ。
杉本 すみません(笑)。
藤田 当社はこれまでに40億円投資して400億円の収益を上げているくらい、投資は得意分野なのです。杉本くんに投資した判断は間違っていないと思っています。事業内容はもちろん大切ですが、端的に言うと人物投資です。その判断基準は言葉にしにくいですが、やはり先ほども話した「付き合う価値があるかどうか」です。
杉本 そういえば、破綻に向かって転がり落ちていく当時、痛感したことがあるんです。じつは、ある人から「少しお金を残しておけ」といわれたことを、何人かの方に相談したんですけど、藤田さんをはじめ第一線で活躍している人たちは異口同音に「お前、そんなことやったら二度と表舞台に上がれなくなるぞ」と戒めてくださった。不動産業界にはそれこそ魑魅魍魎とした世界もあるし、400億分の物件を抱えていた当時は数億の金を残す方法くらいいくらでもありました。でも、みなさんのアドバイスのおかげで、正々堂々と倒れることができたんです。表舞台の、第一線で活躍している経営者の凄みを感じましたね。
藤田 その「B」のエピソードは強烈でした。相場より安く売り払って、銀行は文句を言わないもの?
杉本 当時は不動産の相場が一時的にクラッシュしていましたから、おそらく問題にはならなかったでしょう。しかも「B」はキャッシュですから税金も掛からない。誘惑は強烈です。
藤田 本の帯にも書いた通り、本当に杉本くんの経験はすべての経営者にとっての教訓に満ちていると思う。
杉本 ありがとうございます。ともあれこうして復活できて、今度の会社で上場準備を始める時には、ストックオプションをやって、藤田さんやご迷惑をかけた方々に持っていただきたいとも思っているんです。
藤田 迷惑かかったとは思っていないし、そんな気遣い、いらないよ(笑)。