ビジネス・ノンフィクションとしての迫力にも満ちた『30歳で400億円の負債を抱えた僕が、もう一度、起業を決意した理由』の著者である起業家・杉本宏之氏が、本書の中にも登場する起業家と語り合う。第2回に登場するのは、どん底の時期、著者を支えた恩人でもある、サイバーエージェントの藤田晋氏である。対談後編では、起業家への投資に対する考え方に話が広がる。(構成・寄本好則 写真・寺川真嗣)
どん底でも明るくて
付き合う価値があった
編集部 杉本さんの本には、会社が破綻してどん底で苦しんで、再び復活するまでが描かれているわけですが、復活するために藤田さんをはじめとする多くの方々に支えられています。現実に、杉本さんのような縁に恵まれるのは、奇跡に近い気がするのですが。
藤田 いや、全然奇跡とは思わないですよ。とても単純な話で、一度は失敗していても、杉本くんには付き合いたいと思わせる価値があった。実際、民事再生してどん底にいても杉本くんを慕い行動をともにする社員の方もいたし、周囲のわれわれが応援する理由になるだけの人望があった。地獄の底でのたうち回っているのに、なにしろ明るかったね。
杉本 ありがとうございます。
1973年生まれ。青山学院大学卒。1997年、株式会社インテリジェンス入社。1998年 株式会社サイバーエージェント設立、代表取締役社長に就任。『渋谷ではたらく社長の告白〈新装版〉』『起業家』(いずれも幻冬舎)ほか著書多数。
藤田 当時、リーマンショックの影響で経営危機になり本当に暗い人もいたが、それでは周囲も付き合いにくいし、自分から姿を消していった人も少なくありません。それに比べ、杉本くんには落ち込んだふりをしているだけ、みたいな明るさがあった。
杉本 いえいえ、ほんとに落ち込みましたよ(笑)。ただ、私自身「絶対に諦めない」と思っていたことはたしかです。当時の社員たちにも「俺は絶対にここでは終わらない」と言ってました。給料が3分の1になっても、私の復活を信じて一緒に働いてくれたのはうれしかったですね。
藤田 これは、当社の社内でもよく言うのだけど、いくら窮地に陥っていても「ここでは終われない」という気概を感じる若い経営者は買いだと思う。僕自身、何度もピンチはあったが、なんとか会社を成長させ続けている。
杉本 なるほど。藤田流の投資哲学ですね。
藤田 最近、経営不振に陥っている知り合いの若い企業家がいるが、彼はもっとどん底まで体験した方がいい。そうしたら彼の会社の株を買います。