30歳で400億円の負債を抱えた僕が、もう一度、起業を決意した理由』が発売1ヵ月で4刷と大反響を呼んでいる。その著者である起業家・杉本宏之氏が、本書の中にもたびたび登場する堀江貴文氏と語り合う。お互いにどん底を経験して再起を果たした二人の考える起業家の思考とは? ――この対談は、ホリエモンチャンネルの収録に引き続いて行われた。対談の後半では、なんのために働くのか、なんのために会社を経営するのか、に議論がおよぶ。(構成・寄本好則 写真・寺川真嗣)

稼ぐのは義務であって目的ではない

編集部 旧態依然としたビジネスや企業経営に警鐘を鳴らすのは重要な意味があると思います。ただ、事業の目的の本質は、やはりお金儲けという面がありますよね。

堀江 え? 僕にとって事業の目的がお金儲けだったことはないですよ。

杉本 起業家には金儲けではない価値観で事業に取り組んでいる人が多い気がします。

起業家対談シリーズ第1回 ホリエモン<br />会社とは「やりたいことをやる」装置だ!
堀江貴文(ほりえ・たかふみ)
1972年福岡県八女市生まれ。実業家。元・株式会社ライブドア代表取締役CEO。民間でのロケット開発を行うSNS株式会社ファウンダー。東京大学在学中の1996年、23歳のときに有限会社オン・ザ・エッヂ(後のライブドア)を起業。2000年、東証マザーズ上場。2004年から05年にかけて、近鉄バファローズやニッポン放送の買収、衆議院総選挙への立候補などといった世間を賑わせる行動で一気に時代の寵児となる。しかし2006年1月、証券取引法違反で東京地検特捜部に逮捕され懲役2年6ヵ月の実刑判決を下される。2013年11月、刑期を終了したのを機に著書『ゼロ』を刊行し新たなスタートを切った。

堀江 そもそも、事業をイメージする時に、お金のためとかお金のためじゃないなんていうこと自体を考えたことがない。意味ないよね、そんなこと。

杉本 あ、でも堀江さん、以前『稼ぐが勝ち』とか、金儲けが大事と思えるタイトルの本を書いてましたよね。

堀江 書いたよ。でも『稼ぐが勝ち』は「小さな成功体験を積み上げて自信をつけよう」ということを書いた本であって、金儲けしろなんて書いてない。

杉本 でも、マスコミにはことあるごとに拝金主義者と言われてしまう?

堀江 うん。だって、マスコミは僕の本読んでないからね。読んでたら、あんなこと言ったり書けるわけがない。タイトル見ただけで中身も読んでないヤツらに批判されても気にしないし、どうでもいいんだけどさ。とにかく、仕事は稼ぐためにやるんじゃない。やりたいことをやれるなら、そんなに稼げなくてもいいんじゃないのっていうこと。僕にはやりたいことがあるから、やりたいことを実現するための「装置」を作っていく、ただそれだけですね。

杉本 たしかに、起業家の感覚はその通りだと思います。

堀江 ただ、装置を作って回り始めると上場とかしちゃうんで、上場したら株主を儲けさせることが義務になる。やりたいことの資金を集めて上場したら、もちろん義務を負うわけです。