「心配することはない。我々会計の初心者だって、ANAと同業の他の航空会社のBSとPLがどうなっているのかという同業他社比較と、このANAという会社自体が過去から現在までどのようにBSとPLが変化してきたかという期間比較を行えば、かなりの財務分析ができるようになる」
石田はそう言いながら、準備していた2枚目の紙を高橋に渡した。
「これは2009年3月期のANAとJAL(日本航空)のBSとPLだ。JALの売上高を100%として、すべて同じ縮尺で作図している。高橋君はこの図を見てどう思う?」
「なんとなく似たような図ですね。有利子負債がどちらも多い」
「そうだな。しかし、先ほど説明したように航空産業は装置産業だから、有利子負債が多いから悪い経営だとは言えないんだ」
「じゃあ、JALは何が悪かったんですか?」
「PLを見ればわかる。全く利益が出てない。営業利益ベースで約500億円の赤字だ」