経営統合のメリットとデメリット

 さらに、もし地域を越えた経営統合を行なうことができれば、経費削減に留まらず、営業上も様々なメリットがあるだろう。具体的には、(1)顧客数の増加により、ビッグデータに基づくマーケティング、たとえばM&Aの仲介などがしやすくなること、(2)これまで各行がバラバラに持っていた産業調査機能を統合し、全国ベースの産業調査が可能になること、(3)有能な行員のノウハウが持ち寄れるため、人材の質の面でもメガバンクに伍して戦える可能性が出てくる、といったことだ。実際、米国では早くからいわゆる「スーパーリージョナルバンク」が台頭し、こうしたメリットを追求して勢力を拡大してきた。

 しかし、その一方で、地域を越えた経営統合を起こすことによるデメリットも無視できない。なぜならば、地域金融機関は、狭い地域の中の取引先を少ない行員がカバーすることによって、一人の顧客を多数の行員が知っているといった形で顧客ニーズの「深堀り」をするところに特徴があるのに、地域を越える再編を行なってしまうと、地域金融機関の良さが失われてしまいかねないからだ。事の善し悪しは別にして、地域金融機関は、取引先の中小企業とその経営者一族を混然一体で管理していることも多い。日々の付き合いの中でそれらを一体のものとして、その信用力を判断することができるのが強みでもある。

 金融庁自身も、前述の監督方針の中で、「地域密着型金融の深化」を求めている。すなわち、地域金融機関は地域の経済・社会への貢献が求められ、たとえば顧客企業へのコンサルティング機能を強化することが長年の課題となっている。よって、地域を越えた経営統合で「スーパーリージョナルバンク」を作ることの是非は慎重に考えられるべきだろう。

 別の言葉で言うならば、仮に地域金融機関同士が経営統合をするとしても、まずは地元のライバル同士(地銀・第二地銀・信金など)の統合から始めるしかないということになる。それは、それぞれの行員にとっては心情的になかなか受け入れ難いものではないかと筆者は想像する。また地域を越えた地銀同士については、当面は業務提携を一層深める動きに留まるのではないだろうか。