つまり、中国政府は、たとえ香港民主化デモを終息させることができたとしても、今後政府に対する国民の不満の噴出に悩むことになるかもしれない。政府の信頼を維持するためには、慎重に行動しなければならない。もちろん、武力や圧力は安易に使えない。政府が安定性を保つには、国民の不満を局面ごとに少しずつ和らげる「ガス抜き」という方法を取らざるを得ない。つまり、民主主義的な政治体制への移行を考えざるを得なくなってくる。

中国共産党は普通選挙での一党優位のために
「自民党」を目指している

 これは荒唐無稽な話とはいえない。既に、中国政府は将来の政治体制の民主化を見越して、研究を積み重ねているという話があるからだ。例えば、梁行政長官は、香港の行政長官選挙について「理想的な改革案が人によって違うのは理解するが、普通選挙はないよりもあった方が良い」と発言している。

 つまり、中国政府は普通選挙の実施自体を否定していない。普通選挙実施後に、中国政府が香港市民に対する支配力を確保できるかが重要なのである。中国政府は民主化の進行について柔軟に考えている。一方的に民主化を抑え込むよりも、共産党支配と民主化をどこでバランスさせるかを模索しているのだ。

 中国政府は、急激な市場経済化、高度経済成長が進む中国本土についても、同様の考えを持っている。本土の国民が、今後民主主義を望むようになることは、政府にとって想定の範囲内だ。本土についても、一方的に民主化を抑える現行の政治体制の維持よりも、むしろ将来の普通選挙導入を前提に、どのように共産党支配を維持していくかを検討しているのではないだろうか。

 中国の専門家からは、中国共産党が将来の党のあり方として「日本の55年体制下の自民党」を研究しているという指摘がある。将来「普通選挙」が導入されれば、共産党以外のさまざまな政党が生まれ、多党制に移行することになる。中国共産党はそこまでは容認する。

 しかし、他の政党への政権交代は許さない。一気に欧米型の「政権交代のある民主主義」には移行しないで、共産党政権の支配をずっと続けたい。そこで、かつての日本の自民党のような、民主主義体制の下で、特定の政党が他党に比べて圧倒的に多くの議席を持ち長期に渡って政権を担当し続ける政党システム「一党優位制」を目指したいというのである。