また、イノベーションを起こせる人材を育てることは、経済成長に不可欠な一人あたりの生産性を上げることにもつながります。わが国のGDPは現在世界3位ですが、ところが一人あたりのGDPはOECD加盟国中、現在10位。かつては2位だったことを考えると、個々の生産量が大きく下がってきてしまっているわけですね。ましてや、これから人口も減っていくとなると、一人あたりの生産性を何としても高めていかなければならない。そのためには、現状の産業の延長線で考えると、方法は2つしかありません。

 一つは労働時間を増やすということです。でもいまの時代、このような「量」を増やすことはなかなかできませんから、そうなると、労働の「質」を高めるしかない。そして、労働の質を高めるためには、高い付加価値を生み出す人材が必要です。そのためには教育しかない。質の高い教育をどうやって提供していくかが、国家戦略的にも問われているのです。

 ただし、科学技術イノベーションといっても、そう簡単にできる話ではありません。新たな芽というものは、やり続けるなかで出てくるものです。ですから、そうした芽が生まれやすい「環境」をつくることが重要です。

理研が自ら決着をつけるべき
STAP問題

――しかし、そうした科学技術イノベーション推進の流れのなかで起きてしまったのが、例のSTAP問題です。世紀の大発見かと注目されたのも束の間、その後の不正発覚で、日本の科学技術に対する評価そのものに大きなダメージを与えた可能性もあります。この問題について大臣はどのように整理し、科学技術を改めて日本の競争力に結びつけていこうと考えていますか。

下村 いま国は2015年4月を目標に、世界トップレベルの研究成果を生み出す機関としての「特定国立研究開発法人」の創設準備を進めています。現在日本にある37の研究開発法人のなかから2~3法人を国立の特定法人として指定する予定ですが、その候補の一つに理化学研究所も入っていたんです。しかし、今回の問題で、理研の指定はとりあえず見送られました。

 この新たな特定法人は、これまでの研究開発法人とは違い、業務の効率化に縛られることなく、組織に大きな裁量権が認められます。たとえば給与体系。報酬なども独自に決めることができるようになるため、世界から優秀な研究者を集められるようになります。また、研究費の資源配分においても同様です。中長期的に研究に専念できる環境をつくることができるようになるのです。

 ところが、その特定法人への指定を予定していた理研に、今回のような問題が出てしまいましたから、まずは国民の理解を得るためにも、研究不正の問題に加えて、STAP細胞が本当にあるのかどうかの検証、さらには組織自体のガバナンス、コンプライアンス等、それらを全部整理したうえで、理研そのものが今後世界トップレベルの研究開発法人としてふさわしいのかどうかが、いま問われています。そうして国民の理解と納得が得られてからでないと、特定法人への指定は難しいですね。もちろん文科省もきちんと指導しますが、理研にはそうした自浄能力を発揮してもらいたいと思っています。