第1回は、2016年以降の新卒採用がどうなりそうなのか、また、企業の採用担当者にとっては、どういうことが求められるようになるのか等についてお話ししました。今回はより具体的に、企業の側から見た新卒採用の「面接」について、考えてみたいと思います。
採用における
もったいない予習
「もったいない予習」とは何かと言いますと、先日、大学でキャリア支援の仕事をしている仲間から聞いた、“なるほどなぁ”という話のことです。
その仲間が言うには、最近、企業の若手人事担当者から大学に対して、「キャリアセミナー・就職対策セミナー的なことをやりたい」という売込がとても多いというのです。
でも、そこで語られるのはたいてい、自分の成功体験の押し付けと、採用側から見たテクニック論。特に経営のレイヤーでもない人が最終面接の対応の仕方まで語ったりするので、原則的にご遠慮いただいているという話でした。
では大学自身がやっていることはどうかといえば、自己分析とテクニック重視のキャリア教育が主流になっているのも事実でしょう。そして、ちまたには就活予備校的なサービスも乱立しています。
結果、多くの学生が面接の表面的なテクニックを身につけて、採用面接に臨むことになります。これにはさまざまな問題がありますが、「予習をして本番に臨む」ということだけを見れば、本質的には悪いことではありません。
仕事において「予習」は、きわめて大切です。例えば、営業に配属されて飛び込み訪問をするにしても、飛び込み先についてきちんと予習をしていくか否かで、話の幅は全く変わってきます。また、お客様から見れば自分のことを調べてきてくれているというだけで、多少なりとも親近感が湧くものです。
ただ、新卒採用の面接においては、その「予習」の内容が少し“もったいない”ことになっているようです。
もちろん、そのような「予習」が横行するのには、何がしかの合理性があるはず。どうも、今の新卒採用では、決して本質的ではない「予習」であっても効果を発揮してしまうという実態があるようなのです。これは企業側の問題です。
どうしてこんな問題が起きているのでしょう。
新卒採用における
「情緒的」側面とは
「採用学」を提唱されている横浜国立大学の服部泰宏先生と、少し前に採用関係のパネルディスカッションで一緒に進行役をさせていただきました。打ち合わせの結果、新卒採用における「情緒的」な側面を私が、「合理的」な側面を服部先生がというように、スタンス分けをして話を進めさせていただくことにしました。
というのも、日本の新卒一括採用というのは、合理性だけでは語れない状況にあります。それは、できあがった人材を特定の業務に照らし合わせてスペック採用するのではなく、これから仕事の中で成長していこうという人材を、期待感をもって総合職採用するからです。
このことは「面接で何を見きわめればいいのか」という問題を、とても難しくします。
服部先生は、採用には「3つのマッチング」があると語ります。
「期待のマッチング」「フィーリングのマッチング」「能力のマッチング」の3つです。
そして、現在の新卒採用面接は、この3つのうち「フィーリングのマッチング」に大きく偏っている傾向があります。