
NTTが資本・業務提携を結んだSBIホールディングス(HD)がKDDIに接近している。SBI証券は7月30日、KDDI傘下の金融グループと業務提携の検討を開始したと発表した。関係者によると、SBIはKDDIとの提携拡大に意欲を示しており、これにより、NTTグループに対抗する金融連合に発展する可能性さえありそうだ。特集『巨人復権 大NTTの野心』の#8では、NTTとKDDIの両グループを手玉に取るSBIの思惑に迫る。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
NTTとSBIの提携交渉の裏で進んだ
SBI北尾氏とKDDI高橋氏の極秘会談
NTTとSBIホールディングス(HD)は5月29日、資本業務提携を結んだ。これに基づきNTT傘下のNTTドコモは、SBIHDが保有する住信SBIネット銀行の株式を譲り受ける。すでにNTTはSBIHDに約1100億円で約8%の出資を完了した。
NTTグループとSBIの交渉は紆余曲折があった。住信SBI株の売却金額などでドコモと折り合わず、今年2月には交渉が一時決裂。NTTグループ側の申し入れで交渉が再開してようやく合意し、難産の末の提携だったことが分かっている。
一方で、この「NTT・SBI連合」と呼ばれる巨大提携の交渉の裏で、SBIHDの北尾吉孝会長は、ある意外な人物と会談していた。
「いい話し合いができた」――。
北尾氏が周囲にそう話した会談相手とは、KDDI会長の高橋誠氏だ。
KDDIの高橋氏は今年4月1日付で、松田浩路氏に社長を譲って代表権を持つ会長に就任している。NTTとの提携交渉が難航する中で北尾氏は、NTTのライバル企業のKDDIトップと接触していたことになる。
そして、このトップ会談の成果は、今夏の小さなプレスリリースで表面化した。
7月30日、SBIHDの中核会社のSBI証券とKDDI傘下の金融持ち株会社のauフィナンシャルホールディングスは、個人金融分野において業務提携の検討を開始したと発表した。
提携の一環として、SBI証券とKDDI傘下のauじぶん銀行は2025年秋をめどに口座連携のサービスを開始する。だが、あるSBIの関係者は「この内容で全てが決まったわけではない」と述べ、SBIとKDDIの金融分野の提携が、さらに広がる可能性を示唆した。
このままSBIがドコモ経済圏からKDDI傘下のau経済圏へのシフトを強めて提携を拡大すれば、「KDDI・SBI連合」とも呼べる勢力に発展して、NTTグループに対抗するシナリオも見えてくる。
果たして、NTTの出資を受けたSBIがKDDIに接近する思惑とは何なのか。次ページで迫る。