「卵はいつくかのバスケットに分けて入れよう」。これは、投資の鉄則だ。全世界でビジネスを展開するグローバル企業には、1つの市場だけに依存しない強みがある。一方で、グローバル企業の経営は、世界を相手にするだけに一筋縄でいかない難しさがある。どのようにしたら困難を乗り越えて強みを生かせるのか。ファイナンスの観点から、前ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン経理・財務・戦略担当役員の祖父江基史氏に聞いた。
グローバル企業は競争上、圧倒的に優位
外資系の日本法人で働いていると、業績は山あり谷ありです。利益が倍になったかと思えば、数年後には半分になることも珍しくありません。そのたびに、社内は一喜一憂で大騒ぎです。もし、日本法人が単独の会社だったら、さぞかし安定感のない危なっかしい会社でしょう。
前ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン経理・財務・戦略担当役員
1965年東京生まれ。早稲田大学理工修士ならびにデューク大学経済学修士。日本銀行で9年間勤務の後、インテル、デル、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)にて、国内外のファイナンス、セールスマーケティング職を歴任し、ビジネスモデルの提案、プロフィットストリームの改善に従事する。2014年8月末にBATを退職し、現在、ノースキャロナイナ州立大学客員研究員。GAISHIKEI LEADERSのメンバーとしても活躍する。
しかしながら、多くのグローバル企業は、全社的に見れば業績を継続的に成長させています。ある国が悪い時には他国が好調だったり、ある国で将来のための投資が必要になれば、他国で利益を確保したり、お互いにかばい合える体制となっているからです。株主から見れば、同じ期待成長率だったら、安定・安心できる方が企業価値を高く評価できます。
また、グループ全体で安定しているからこそ、国ごとの業績の浮き沈みに左右されることなく、苦しい中でも次の一手を打つことができます。業績の悪い時に何もできない会社と比べて、1歩も2歩も前に進むことができます。
そして、何といっても、経済のグローバル化が進展した今は、グローバルでビジネスを展開したほうが、規模、投資効率、ブランド力、価格交渉力など、多くの面で圧倒的に優位な立場に立てるのです。
グローバルに展開は、各国をバラバラに運営していては、1プラス1は最大でも2にしかなりません。下手をすると、経営のタガが緩み、2以下でしょう。
1プラス1を3にするためには、全社を統合してメリットを最大限に生かす経営を行うことが必要です。各国が自分の役割を理解し、整合的に全力を出すことで、初めてグローバル化のメリットが生かされます。
グローバル企業は、最初からグローバル企業だったわけではありません。海外進出やM&Aを通じて、ビジネスを広げ、グローバルでの統合という困難を乗り越えてきたのです。では、グローバルでの統合に必要なものは何でしょうか。