ここなら、どなたを誘っても文句が出ないでしょう。時代の先端を走っている、「特上・手打ち蕎麦屋」をたっぷりとお見せします。

 難解な現代の空気を読みきった亭主たちのストラテジーと店づくり、あなたがまだ体験したことのない蕎麦と蕎麦料理。人を呼ぶ、そのオーラの暖簾をくぐってみませんか。

 抜きん出たものをひとつ持つことで、店の名を高く上げる。山科の奥深くに、秘められた技術を持つ蕎麦屋があります。春秋山荘「蕎麦 高月(こうげつ)」の名は、さざ波のように人から人へと伝わりだしました。あなたも、その秘伝技術のオーラを覗いてみませんか。

(1)店のオーラ
京の奥庭に、秘伝技術が隠れていた

 僕が、「蕎麦 高月」を知ったのは、京都の蕎麦屋巡りを始めて、4度目くらいの上洛の折でした。携帯で蕎麦屋の検索をしていて、その名が出てきました。それまで聞いたことのない蕎麦屋でしたが、なんとなくよい方の直感が働きました。直ぐに電話をしたのですが、満席で断られてしまったのです。

 それから3月ほど経て、その時は前もって予約を取り「蕎麦 高月」に入りました。

 以来、上洛の際は必ず電話を入れることになりました。

藁葺きの古色蒼然とした建物。店内は黒光りした桟が走り、明治の旧き時代を偲ぶような趣があります。藁葺き屋根の手入れは宮城から職人を呼びます。

 京都は山科の奥深くに毘沙門堂があります。毘沙門堂は、守護神の本尊を安置していて、隠れた紅葉の名所としても知られています。

 参堂の脇道を少し歩くと、古色蒼然とした建物が忽然と現れます。そこが「蕎麦 高月」です。

 滋賀で明治3年に建てられた欅(けやき)造りの民族資料建造物だったものを、30年前に別荘として移築したものです。

 いくつかの経緯があって、今、31歳の青年店主、高橋善徳さんが、ここで、春秋山荘「蕎麦 高月」として、客を迎え入れています。

 鱧(はも)といえば京都。その京都に鱧の秘伝技術があります。

 鱧を料理するには、身の一寸(3cm)ごとに24回、包丁を入れて、小骨を切ります。驚いた事に、その鱧の半身に約250本もある小骨を、身を傷めずに抜く技術を編みだした人がいます。京懐石料理「馳走 高月」の主です。