2020年に開催される東京五輪のメインスタジアムとなる新国立競技場。建て替えに賛否両論が渦巻き、解体工事で談合疑惑まで浮上する中、予定では10月末に建設工事の受注先が決定。業界内では大成建設と竹中工務店が本命といわれてきた。この2社には本気で受注を狙うだけの十分な理由があった。

競技場を縦に通る2本の梁が、難工事の要因となりそうだ。
提供:日本スポーツ振興センター

「あんなの絶対に受注したくない」「構造の複雑さからして、見るからに赤字になりそう」「うちは受注競争から降りた方がいい」──。ゼネコン業界関係者の間で悪評紛々なのが、2020年の東京オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムとなる国立競技場の建て替え工事だ。計画は迷走に次ぐ迷走を重ね、五輪の歓迎ムードに水を差している。

 五輪開催が決まる前の12年11月に新築案コンペの結果が発表されたが、最優秀賞となったイラク出身の女性建築家ザハ・ハディド氏の案は延べ床面積29万平方メートル、総工費3000億円で「大き過ぎる」「コストが高過ぎる」と世論の批判を浴び、21万平方メートル、1625億円に縮小されたのは記憶に新しい。

 計画は出だしからつまずいた。

 解体工事の1回目の入札は不調。2回目は埼玉県行田市の解体業者である関東建設興業が南北二つの工区を落札したが談合情報が寄せられた。発注者である文部科学省所管の独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)の職員が入札期間中に入札書類を開封、各業者の入札価格を確認するという前代未聞の“ミス”が国の調査で発覚。3回目の入札を行うことになった。談合疑惑については、国会で追及を受けた安倍晋三首相が「警察が調査している」と答弁するなど、予断を許さない。