競争相手の問題もあるが

 新興国向けのインフラ投資のビジネスが活況を呈している。『日本経済新聞』は、朝刊一面左上のビジネスマンが電車でよく読むスペースで、3月12日、13日と「攻防 海外インフラ」という特集を掲載した。12日の記事によると、2030年までに、新興国のインフラ投資で25兆ドル(約2250兆円)の需要があるとの試算もあるという。日本のGDPの5年分近い額だ。こうした中、新興国のインフラ投資案件の売り込みは、各国の政府を巻き込んだ政・官・民一体の受注競争の様相を呈している、というのが、日経の特集の骨子だ。

 そこで、たとえば、日本の技術力が高い原子力では、日本勢は、ベトナムの原子力発電第一期の受注ではロシアの国営ロスアトムに敗れ、アブダビでは李明博大統領が受注に乗り出した韓国勢に敗れた。

 日経自身が結論を述べているわけではなく、政府がODA(海外開発援助)を通じて受注に関与することの弊害についても触れているが、「これからのインフラビジネスは官民が一緒になってやらなければならない」(小島順彦・三菱商事社長)とか「節度はいるが、政府が一定の関与をすることは決して悪いことではない。他の国はより関与の度合いが強い」(岡田克也外相)といったコメントを紹介するなど、日本勢の海外プロジェクト受注に向けて、もう一段政府の関与を強められないかという方向性を滲ませているように読めた。

 確かに、主に新興国のプロジェクトに対して、海外勢が政府と一体になった売り込みをかけているのは事実だ。特に、OECDに属さない中国とロシアは、かつての日本が多用して批判されOECDの勧告を受けた「タイド・ローン」(使途に関して紐付きのローンの提供)も多用して海外ビジネスの獲得にいそしんでいる。

 日本政府が全く海外ビジネスに関与しなかった場合、日本企業が他国よりも不利になるケースは多々ありそうではある。

 それでは、日本政府はどこまで関与すべきなのだろうか。