和解金狙いではない

 しかし、その後アップルは別のサプライヤーに代替ピンを製造させ、島野へのピン発注量を激減させた。島野は供給先に関する“合意”の無視と特許侵害を訴えた。

 島野が取引再開を求めると13年5月下旬、アップル担当者は値下げ要求の他に「深刻な問題を認識している」という文面で始まるメールを送ってきた。「ピンの在庫が残っており、先入先出法(仕入れた順に出庫すると仮定した在庫評価方法)のルール上、新たにピンを発注する前に在庫を使い切る必要がある」という。そして、「この問題を解決するには、在庫ピンの購入時価格と島野の値下げ後の価格の差額分に基づいたリベートを、島野がアップルに払う必要がある」と続いていた。

 約1週間後には「この取引を成立させるには、6月第1週までに159万ドル支払ってもらう必要がある」というメールも届いた。

 島野は不当な要求と思いながらも、やむなく値下げとリベートの支払いを承諾。「以下の口座に送金してください。バンク・オブ・アメリカの口座番号375129****……」と、アップル側が指定した振込先に送金した。

 以上が、島野が提出した証拠資料からひもといた訴訟に至るまでの詳細な経緯だ。「和解金狙いではなく、企業の大小を問わず最低限のルールを守るべきという思いで提訴した」という島野製作所。訴訟への注目度は高まっている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 後藤直義、鈴木崇久)