2014年10月27日、財政審は住宅扶助・冬季加算等の引き下げを強く求める内容の資料を公開した。翌28日、生活保護問題対策全国会議は、厚労大臣等に引き下げ撤回を求める要望書を提出した。
一連の検討の起点となっている“事実”は、歪曲や捏造を含んでいないだろうか? 目的とする方針は、極端な飛躍や誘導を含まない論理によって導かれているだろうか?
「引き下げると決めたら引き下げる」政府と
翌日に撤回を求めた人々
今回は、2014年10月28日に生活保護問題対策全国会議(以下、全国会議)が厚生労働大臣および社保審・生活保護基準部会の全委員に対して提出した「生活扶助基準・住宅扶助基準・冬季加算の引き下げ撤回等を求める要望書」を中心に、政府方針および一部報道の「住宅扶助・冬季加算は引き下げが妥当」とする方針を検証する。
この要望書は同日、財政審・財政制度分科会の全委員に対しても郵送された。要望書全文は、全国会議のブログに掲載されている。また要点は、全国会議が作成した資料「なにがなんでも生活保護基準を引き下げたい? 欺瞞と疑問だらけの、厚労省データ」に示されている。とはいえ、「ぱっと見」で政府の主張と全国会議の主張のどちらが事実なのかを判断するのは、誰にとっても容易ではないだろう。それでも少しだけ、政府が本当のことを言っていない可能性について考えてみていただきたい。
その前日にあたる10月27日、財政審・財政制度分科会において、年金・生活保護・障害福祉・文教にわたる引き下げ方針が議論された(配布資料)。このところ物議をかもしている「小学校のクラス定員を35人から40人に戻す」という提案も、この分科会で行われた。
障害者である筆者自身は、同分科会に提出された「障害者福祉費用が増大している(ゆえに、引き締めが必要)」とする根拠不明のグラフ(配布資料30ページ)に、背筋が凍りつく思いである。おそらくは何らかの操作が行われて「増大している」というグラフが示されているのであろう。根拠となりうる事実として思い当たるものは何もないからだ。むしろ、この期間に進行していたのは緊縮・引き下げである。
しかし、生活保護の住宅扶助と冬季加算という、人の生死に関わりかねない目の前の問題を追い続けていると、近未来に自分自身のQOLを蝕むであろう障害者福祉の問題にまで手が回らないのが実情だ。既に実施されている生活扶助の平均6.5%の引き下げが「真綿で首を絞める」ならば、住宅扶助と冬季加算の引き下げは「ガーゼで首を絞める」ではないだろうか? その先に目指されているものは、「社会にコストを強いる存在」というレッテル貼りの可能な人々全員を対象とした、緩慢な「皆殺し」なのではないか? 筆者は、それほどの危機感を抱いている。