あの大惨事を防ぐことはできなかったのか――。

 9月末に突如起きた御嶽山(長野・岐阜県境、標高3067メートル)の噴火は60名近くの死者を出し、戦後最悪の火山災害となった。我々は改めて、自然災害の恐ろしさ、大自然の中で生かされている人間の非力さを思い知った。火山噴火や巨大地震といった自然災害の脅威に囲まれて暮らす日本人は、危機意識を高めるべきだろう。

 御嶽山の噴火騒動の直後に、「まるで今回の噴火災害のリスクを予言していたようだ」と話題になったテレビ番組がある。『NHKスペシャル』のシリーズ「巨大災害 MEGA DISASTER~地球大変動の衝撃~」だ。火山大噴火や巨大地震など地球規模の自然災害に関する最新の研究を世界中で取材し、そのメカニズムと脅威をわかりやすく映像化した同シリーズは、視聴者から高い評価を得た。

 NHKの制作陣は、今なぜこうした番組をつくったのか。彼らがテレビマンとして視聴者に訴えようとしたメッセージとは何か。これから2回にわたり、「MEGA DISASTER」の制作者が、膨大な取材の過程で得た知見や最新情報を交えながら、「火山大噴火」「巨大地震」への問題意識を語る。

山本高穂(やまもと・たかお)
NHKエンタープライズ  自然科学番組 エグゼクティブ・プロデューサー。1971年生まれ。東京都出身。1997年北海道大学水産学部卒業後、NHK入局。函館局、札幌局、制作局科学・環境番組部を経て現所属。これまで『ダーウィンが来た! 生きもの新伝説』『サイエンスZERO』『ためしてガッテン』『クローズアップ現代』などを制作。主な作品にNHKスペシャル『謎の海洋民族モーケン』(2008年)NHKスペシャル『病の起源・うつ病』(2013年)がある。著書に『NHKスペシャル 病の起源 うつ病と心臓病」(宝島社)など。 Photo:DOL

 第1回目は、火山大噴火のリスクについて。語ってもらうのは、「MEGA DISASTER」シリーズ第4集「火山大噴火 ~迫りくる地球規模の異変~」の制作を担当した山本高穂氏(NHKエンタープライズ 制作本部 自然科学番組 エグゼクティブ・プロデューサー)だ。

 日本は110もの活火山をもつ、世界でも屈指の火山列島だ。しかし山本氏によると、噴火の予知はある程度可能と言われる一方で、諸外国と比べて日本の火山観測・研究は環境が十分に整っていない部分も多いという。なぜそんな状況なのだろうか。(構成/ダイヤモンド・オンライン編集部 安田有希子、小尾拓也 編集協力/ダイヤモンド社 ソリューション企画部 宮田和美 番組画像提供/日本放送協会)


途方もない「メガ自然災害」の予兆
NHK制作陣が胸に抱いた使命

「1000年に1度の津波だ」「実は平安時代にもあった」

 2011年の東日本大震災の後にこんな話が出た。NHKスペシャルで「巨大災害 MEGA DISASTER~地球大変動の衝撃~」の企画が立ち上がったのは、こうした地球のメカニズムが引き起こす大規模な自然災害に危機感を持ち、最新科学からその実態に迫っていこうというのがきっかけだった。