「採用活動で偏差値を1つの基準軸として見ているのは、『大学受験のときにどれほどの問題解決能力を発揮したか』という軸で学生を見たいからです。どの企業も、学生には現状を打開できる問題解決能力を求めています。それを証明するには、『偏差値の高い大学の入試を突破した』という実績が一番わかりやすいため、偏差値という指標がまだ就職活動に大きく影響しているのだと思います」

 ただ偏差値を見ているのではなく、「その偏差値を突破できるほどの問題解決能力があるか」という実績を見ているということらしい。確かに採用活動は、明確な基準を持った数値で学生を判断できる要素が少なく、就活生を明確にランクづけできるのはせいぜい筆記試験くらいなものなので、偏差値を1つの指標とするのは理にかなっているのかもしれない。

 それを知ってのことなのか、地方の中堅以下の高校にはほとんど見受けられなくなった浪人生が、ごく一部の名門高校にだけよく見かけられる。国立名門大学、医学部、トップ層の芸術大学などを目指すような人たちが集まるこうした進学校では、「名門大学に入ることがステータス」という考えが根強く生きているのかもしれないが、その本質には大学入学よりも先の将来を見据えた視座があるのかもしれない。

どんな環境にも対応できる「基礎学力」を
延長して学べる期間こそが“浪人時代”

 「あれだけ必死に勉強したのは、人生を振り返ってみても、あのときしかない」

 浪人経験がある人たちに話を聞くと、苦しげな表情で話す人もいれば、誇らしげに語る人もいたが、皆そろって同じことを口にする。そしてほとんどの人が「あの時間は無駄ではなかった」と話した。

 彼らは全員社会人になっているが、社会人になると1歳や2歳の年齢差の人が同期ということは全く珍しくなく、そこに優劣はほぼ存在しない。「学生時代はあんなにコンプレックスを感じていたのに、今となっては全くそれを思い出せないくらい」という声もあった。