そして、このようなストーリーからは、次のようなケースが思い浮かぶ。一つが、技術やノウハウのない台湾メーカーにPCに関する技術やノウハウを供与することによって、PCの周辺部品や最終組み立てのエコシステムを構築し、最終的にPCの基幹部品を握った米国インテルのストーリーである。もう一つが、携帯電話メーカーとしてはほとんど実績のなかった韓国サムスンと組むことで、自社技術を活用した携帯電話端末の市場投入に成功し、結果的にほぼ全ての携帯電話にとって欠かせない通信チップメーカーとなった米国クアルコムのストーリーである。

 つまり、何のツールやリソースも持たない新規参入者を支援すべく、自社のツールやリソースを積極的に提供し、その新規参入者が台頭して市場を席巻すると同時に自社にとって優位な市場環境を実現するという、極めてしたたかなビジネス戦略を遂行した欧米企業の姿である。

 日本の企業の多くは、国内外の新規参入者に対して積極的に自社のツールやリソースを提供することを、「リスク」と捉えているように感じる。しかし、規制緩和やグローバリゼーションが進んだ90年代以降は、「新規参入者を助けるものが市場を制する」というパターンがあらゆる分野で散見されるようになった。航空機産業でもそのパターンが見られたことについては、筆者でさえも驚きを隠せなかったが、航空機で起きているということはどのセクターでも起きる可能性があるということだ。

 誰かが「リスク」を取ってしまうと、気づいた時にはリスクをとった者が設計した市場ルールが席巻していたということになりかねない。リスクを避けて安全運転を心がけたい気持ちは分かるが、そのことが逆にリスクになるという可能性がある。本当のリスクは何なのかを考慮した上で、したたかなビジネス戦略が求められているのではないだろうか。

※続きはこちらです。