世間を賑わせている衆院総選挙ですが、永田町と霞ヶ関から入ってくる情報でも、報道どおり12月に行なわれる可能性が極めて高いようです。しかし、それには2つの大きなリスクが内包されているのではないでしょうか。

いま総選挙を行う大義名分は?

 もちろん、政治的には12月に解散・総選挙を行なうのは非常に正しいと言えます。二閣僚の辞任があったとはいえ、まだ政権支持率は50%弱と高い水準を維持している一方で、来年は不人気政策(集団的自衛権、原発再稼働)を実施せざるを得ず、北朝鮮拉致被害者問題もどう推移するか見通しにくいことを考えると、このタイミングで解散・総選挙というのは政治的には賢明と言えます。

 問題は、衆議院議員の任期半ばで解散・総選挙を行なう以上、それ相応の“大義名分”が必要になるということです。そして、もし報道されているように消費税再増税の延期を国民に問うことが大義名分だとしたら、それはおかしいと言わざるを得ません。

 新税の導入ならともかく、既存の税について増税をどうするかは経済運営の裁量の範囲内で決めるべきことです。実際、消費税を5%から2段階で10%まで増税することも、国民に問うことなく3党合意によって決まっています。それなのに、今回の8%から10%への増税の延期についてだけは国民に問うというのは、理屈として成り立ちません。

 かつ、世論調査では消費税再増税への反対が多いのは事実ですが、仮に国民に不人気な政策だから信を問うとしたら、集団的自衛権や原発再稼働などの他の不人気政策については問わずに消費税再増税だけを問うというのも、理屈としてはおかしいでしょう。