音楽的にも商業的にも成功

 兎に角、ここにはロックミュージックの無限の可能性が潜んでいます。その可能性がクラシック音楽の世界をも刺激します。クロノスカルテットは、伝統的な古典音楽から現代音楽まで手がける現代屈指の弦楽四重奏団です。アルバム「現代の弦楽四重奏曲」(写真)には”紫のけむり”を収録。ヴァイオリン、ビオラ、チェロが奏でる響きによって、“紫のけむり”には音楽の普遍的な核が宿っていることを証明しています。それは創造性の爆発です。革新的な音楽だけが持ち得るものです。

 しかし、音楽的な価値があるからといって、商業的にも成功することは何ら保証されていません。モーツァルトもムソルグスキーもそんな宿命を背負っていました。

 では、ジミ・ヘンドリックスの場合はどうでしょうか?

 “紫のけむり”は、まず1967年3月17日に英国でシングル盤として発表されました。ジミ・ヘンドリックスにとっては2枚目です。英国の主要音楽誌メロディーメイカー3月25日号で43位初登場。6週間かけてチャートを上り5月6日号で最高3位となりました。

 ちなみに、米国ではシングル盤は同年6月19日に発表されましたが、ビルボード誌で最高65位どまり。その一方で、“紫のけむり”をA面1曲目に収録したデビューアルバムは、ビルボード誌アルバムチャートで最高5位まで上昇しました。

 ”紫のけむり”は、ジミ・ヘンドリックスの代表曲で、ライブの定番でもあります。伝説となったウッドストック(本コラム第91回参照)での演奏は神がかり的です。あの有名な”星条旗よ永遠なれ”からのメドレーで“紫のけむり”に突入する瞬間には、ロックのコンサートが与え得る最高のエクスタシーが存在しています。実況録音盤(写真)は必聴です。

 創造の爆発の瞬間を留める”紫のけむり”は、敢えて例えれば、ロックミュージックのビッグバンを刻むものかもしれません。

(音楽愛好家・小栗勘太郎)