「グレーゾーン事態」にどう対処すべきか <br />自衛隊が再考しなければならない3つのポイント<br />ニッポンの安全保障を考える(2)<br />――小野田治・ハーバード大学シニアフェローおのだ・おさむ
1954年神奈川県生まれ。防衛大学航空工学科(第21期)卒。77年10月第一警戒群(笠取山、三重県)に勤務。79年3月第35警戒群(経ケ岬:京都府)保守整備部門の小隊長。82年12月警戒航空隊(青森県三沢基地)警戒航空隊の部隊建設に従事。保守整備部門の小隊長。89年8月航空幕僚副長副官(東京都市ヶ谷基地)。96年8月防衛研究所第44期一般課程(東京都目黒基地)。99年3月航空幕僚監部防衛課装備体系企画調整官(東京都桧町基地)。00年8月第3補給処資材計画部長(埼玉県入間基地)。01年8月航空幕僚監部防衛課長(東京都市ヶ谷基地)。02年12月第3補給処長(埼玉県入間基地)。04年8月第7航空団司令兼百里基地司令(茨城県)。06年8月航空幕僚監部人事教育部長(東京都市ヶ谷基地)。08年8月西部航空方面隊司令官(福岡県春日基地)。10年12月航空教育集団司令官(静岡県浜松基地)。12年7月勧奨退職。

 昨年10月、安倍政権が日米安全保障協議委員会(「2+2」)で日本の役割を拡大すべく、日米防衛協力の指針(「ガイドライン」)を2014年末までに改訂することに合意。具体的には、拡大核抑止の強化、宇宙やサイバーなど新たな分野での協力、防衛装備・技術協力など、両国の連携の緊密化に合意した。

 この2+2で合意されたガイドラインの改訂は、昨年12月の閣議決定(国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画)と密接に関連している。

「あらゆる状況におけるシームレスな二国間の協力を可能とするよう強化する」、「同盟のグローバルな性質を反映させるため、テロ対策、海賊対策、平和維持、能力構築、人道支援・災害救援、装備・技術といった分野を包含する協力の範囲を拡大する」とし、日米が地域において平素から有事に至るまでシームレスに協力・連携することを目指しているからだ。

 その主要な課題は、第1に防衛出動に至らないグレーゾーン事態における協力、第2にA2/AD及び離島侵攻への対応、第3に拡大核抑止の信頼性の向上、第4に日米韓など多国間防衛協力への発展である。

頻発する異常接近
国際常識無視の中国軍

 以下では閣議決定の内容と、2+2で合意したガイドライン改訂の内容を実現するための課題を踏まえ、今後の日米防衛協力のあり方を考える上での論点を整理していこう。なお、主として海上及び航空分野に焦点を当てることにする。

 第1の論点としてあげられるのは「グレーゾーン事態への対処」である。我が国は、グレーゾーン事態を招かないために、また、もし事態が生起してしまった場合に事態を深刻化させないために、再考すべき点は多い。

 まず偶発事件の危険を回避することである。

 グレーゾーン事態とは武力攻撃に至らない侵害のことだ。米国の安全保障専門家は、中国の急速な軍事力増強、領有権等に関する一方的な主張と行動が偶発的な衝突事態や紛争に発展するのではないかと心配している。

 中国の強圧的な行動は、法執行機関だけでなく軍にも及びつつある。2001年の米海軍EP-3電子偵察機への戦闘機衝突に始まり、昨年12月には、中国海軍揚陸艦の米海軍ミサイル巡洋艦への異常接近事件が発生した。

 我が国に対しては、2010年に沖縄南方沖で海上自衛隊艦艇に対して中国海軍の艦載ヘリが異常接近した。また、昨年1月には、東シナ海で海上自衛隊護衛艦に中国海軍フリゲート艦が火器管制レーダーを照射した。火器管制レーダーの照射は、国際的には一連の攻撃行動であり、正当防衛による反撃が認められている。