デフレ進行中ということで、外食や小売り、アパレルなどの産業においては「こんなに安い店が人気」という語られ方をすることが多い。かつてユニクロはその代表格であった。最近の外食産業では餃子の王将などが典型であろう。

 ただし、王将の客単価は決して低いわけではない。同社の直近の発表資料によると、2010年1月は843円となっている。2009年12月までの9ヵ月間の累積においても平均は842円であり、一昨年から比べると平均で10円ほど客単価は下がっているものの、「安い」という言葉で連想されるような数百円レベルの客単価ではないのである。

「デフレ時代は値下げが王道」は本当か?

 昨年12月に牛丼チェーンのすき家が並盛を50円値下げして280円としたときには、かつてデフレ一色だった時期に吉野家が実施した値下げ、あるいは、マクドナルドが実施したハンバーガー58円という値下げを連想させた。

 こうした一連の値下げをみると、「デフレ期は値段を下げないと売れない」というのが定石のように思われる。しかし、王将の客単価の推移はその概念にやや疑念を抱かせる。王将では客数が前年同月比20%もアップしている状況が続いているのである。マクドナルドも、2009年後半はやや減少傾向ではあったものの、この2年間ほどの間の客単価は上昇基調にあった。そして、最近立て続けに出している新商品も値段は安くはない。

 すき家、マクドナルド、王将のウェブサイトを訪問すると、トップページの作りも大いに異なる。すき家では、牛丼新価格280円と大きくアピールしてくるのに対し、マクドナルド、王将では値段のアピールはない。すき家は、昨年12月の牛丼の値下げ以降、既存店客数は10%以上アップしているものの、同時に客単価も10%以上減少し、売上高にしてみるとほぼ前年同期比トントンという状況である。11月までの売上高推移が厳しかったことに比べると、それなりの効果があったと思われるが、この先もこの状況が維持していけるかが勝負どころとなろう。