成熟した社会のイノベーションは
規制改革が鍵を握る

南 政府は今「成熟産業から成長産業への人材流動化」というメッセージを出していますが、現時点で日本の成長産業はどの分野だと思われますか?

朝倉 日本は成熟した国なので、今後特定のセグメントが爆発的に成長することはないでしょうし、国内市場が大きくなることもないと思います。ですから、意図的に何らかの変化を起こさない限り、新しい成長はないはず。シリコンバレーも自然発生ではなく、とても強い政治的背景があって、強烈な規制改革をした結果できたものです。

 成熟した社会における成長の一つのきっかけは、規制の変化にあります。社会全体をしっかり支えてきた健康、医療、エネルギー、インフラなどは完全に規制されていたセグメントなので、ここに規制緩和が起こると大きなイノベーションが生まれる可能性があります。これは先進国の経済成長の典型的なアプローチで、政府がどこまで規制緩和にコミットできるか、また規制緩和をチャンスと捉えて動く人がいるか、さらにそこへ新しいリスクマネーが動くかが鍵を握っています。改革と人とお金が三位一体になることが、大きな成長につながるでしょう。

南 この数年は規制緩和が起こりつつあるという理解でいいですよね。

朝倉 政府は強いコミットメントを表明していますからね。新規参入をしやすくしたり、既存プレイヤーの既得権益を過剰に保護しないようにして産業の新陳代謝を促したりするためには、政治的な意思が大きく影響します。また、ビジネスをつくるのは個人のリーダーシップと、それを支えるリスクキャピタル、そして人材の流動性です。実際、人材の流動性が高い産業では、イノベーションがどんどん起こっています。たとえば、なかなか海外展開できない日本の大手企業が多数存在する一方で、ラーメンチェーン等の外食産業は海外進出し、合理的に世界展開しているのです。こうしたイノベーティブな行動を起こせるのは、人の流動性が高く組織の新陳代謝があるからこそだと思っています。

*シリコンバレーの原点に携わった、朝倉氏のキャリアについて伺った後編は12月19日公開予定です。