――ということは、消費は相当に弱い、ということでしょうか。

やすだ・たかお
ドンキホーテホールディングス会長兼CEO。1949年5月生まれ。80年9月ジャスト(現ドンキホーテホールディングス)設立、社長就任。長崎屋の買収や新業態開発など、同社の業様拡大を主導。
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 そうですね、5%に戻すくらいのことをやっても良かったと思いますよ。それくらい、私どもの会社の業績を見ると堅調に見えるかもしれませんが、消費全体を見てみると、著しく低迷しています。この不都合な真実を、政府は直視しなければならない。この消費の弱さはアベノミクスに暗雲をもたらすことは間違いないです。

――消費の弱さとおっしゃっているのは、駆け込み需要からの反動減で落ち込んだ消費が、戻ってくるといわれたのが、その戻りが弱いということなのでしょうか。

 お客さまの可処分所得があまり増えていないということなんですね。そこに8%へ増税されて、気分的にうんざりというものが拭いきれていない。そこへ来年さらなる10%への増税ということになると、のしかかる将来不安を拭うことなんてできません。そういうときに大事なおカネを無駄に消費することはできません。警戒感が高まっていると思います。

――アベノミクスでメリットを得られている人たちは、いまのところ株や不動産などの資産を持つ一部の人たちに偏っています。

 まさにその通りで、今後は資産価値の上昇による恩恵を得られていない人に、どうやって恩恵が及ぶようにするかが重要で、アベノミクスの真価が問われますね。

 政府は株高と円安で輸出企業や投資家が利益を上げて、景気が上昇し、それによって所得が増えるという、過去の経済原則に基づいていると思います。今、それがそのままいくかというと、分からないですよね。そもそも円安で利益を上げるような企業は一部の大企業です。

霞が関では決して議論されない
10%という税率が持つ意味

――御社には4月の増税前に取材をさせていただきました。その時は、増税は事業にはプラスだと予想されていて、その後、実際に御社はチャンスをものにしました。安田会長は5%に戻すべきだったとおっしゃいましたが、10%にするときも、同様にチャンスになるのではないでしょうか。安田会長は、そうお答えになるかと思っていました。

 もし10%に増税されることが決まっていて、先ほど申し上げたように抗し難い運命ならば、「10%への増税は当社にとってチャンスだ」と言ったと思いますよ。私たち民間企業は、政策は変えられません。常に周りの環境、政策、消費者の変化に対応して生き延びていかないといけない。変えるのは自分自身です。

 ただね、10%への増税が延期になったら、そりゃ話は別ですよ。率直に言わせてもらいますけど、もし10%に消費税上げたら、そりゃあもう、消費に対するダメージは大きいですよ。消費は確実に低迷します。当社はなんとか変化対応してやっていきますけど、10%になったら、今のまま持つかどうかわからない。