なかなか業績を好転させられない旭硝子(AGC)だが、その裏側では自らの存在意義を懸けて“技術立社”としての在り方を見直し始めている。巨額の設備投資を伴うメーカーに共通した問題だが、同社はどのように向き合っているのか。(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)
神奈川県にあるJR鶴見駅で、京浜工業地帯を走る鶴見線に乗り換え、弁天橋駅で降りる。改札を出て左手に向かうと、3分も歩かないうちにAGC旭硝子京浜工場に着く。
1916年(大正5年)に発足した旧鶴見工場は、同社でも3番目に古く、現在は先端技術を扱う施設群があるために部外者は撮影機材の持ち込みは禁止。正式許可を得るには、社判を押した申請書を工場長に提出する必要がある。
Photo by Hitoshi Iketomi
この工場の一角では、建築用板ガラスの強度を調べたり、過大な衝撃に対してガラスがどのように変形したりするのか評価する各種の試験(検証)が行われている。
例えば、高所からガラスに向けて重りを落下させたり、ショットガンの空薬きょうを詰めた振り子を当てたりして各種のデータを採取する。それらの数値は、精査・解析の上で設計部門に戻される。
旭硝子は、FIFAワールドカップ2014(6月12日~7月13日)に、世界初のガラス製ベンチルーフを提供したが、その強度試験も京浜工場の中で行われた。
競技場の内部はお酒の持ち込みが禁止だったが、万が一、ボトルが飛んでくる可能性もある。
試験に関わった技術本部の上沢聡史基盤技術センター主席は、「硬くて重いものをベンチに投げるという試験も行った」と振り返る。