一時は破綻危機がうわさされた日本板硝子。リストラ効果も出てきて、ようやく業績は底を打って回復基調にあるものの、有利子負債の金利負担がのしかかり、再生の道はなお険しい。

 「小が大をのんだ」ことで話題となった日本板硝子による英ピルキントンの買収から8年。業界6位が3位をのみ込んだ買収劇が今なお、日本板硝子を苦しめている。

 買収効果は当初、大きく見えた。両社のシェアを合わせると建築用ガラス、自動車用ガラスで世界トップクラスのシェアを確保する。しかし売上高が2倍以上というピルキントンを6000億円超で買収したことで、有利子負債が一挙に増加して金利負担が重くなった。

 さらに悪いことに、2008年にリーマンショック、10年には欧州危機という大きな景気後退を受けて板ガラスの需要が激減した。特に売上高の約40%が集中する欧州は落ち込みが激しく、利益率は大きく減少。図(1)のように過去5年のうち4年は当期赤字に転落した。「依然として需要は歴史的な低水準」(ガラス業界関係者)という欧州の建築用ガラスについては、図(2)のように売上高はほぼ半減してしまった。結果から言えば、日本板硝子はピルキントンを高値つかみしてしまったのだ。

 当然、財務状態も大幅に悪化した。13年3月期の売上高5213億円に対して、有利子負債は4478億円と高水準だ。図(3)のように、有利子負債から現預金などを差し引いたネット有利子負債も増加傾向にあり、13年12月末には円安が進んだことで海外での有利子負債が膨らんで3999億円になった。収益力を示すEBITDA(のれんなど償却前営業利益)の何倍であるかを計算すると、8.1倍だ。「金融機関が安心して融資するのは3倍程度まで。5倍を超えると相当慎重になる」(メガバンク関係者)というから、完全に危険水域に達している。