「私は一人前の大人は自分の食い扶持は自分で稼ぐものと思っていますので、専業主婦家庭を理想的とは思わないからです」

「自民党が理想とする家族のあり方かな…」

 確かに、男女の役割分担を唱え、専業主婦を奨励する保守派もいる。「共働きしないと、生活が賄えない」という意見もあった。

「磯野家は女性エリアと男性エリアか完全に分かれている。マスオさんと波平はいつも酔い潰れて帰ってくるか、和室のちゃぶ台で食べたり飲んだりしているだけ。育児参加、してませんよね?。夫がサザエさん好きで全巻持ってます。子供達もしょっちゅう読んでいますが、はっきり言ってやめてほしい。気持ち悪い」

 確かにそう見えるかもしれないが、マスオや波平、ノリスケが少ないお小遣いでちびちびとやりくりする描写もあるし、料理をつくることになった波平とマスオがサザエとフネから、いつもの苦労がわかった?と聞かれる4コマもある。男性の弱さもしっかりと風刺されており、時代の違いは仕方ないが、長谷川町子氏の卓越した人物描写がアニメしか見たことのない人に伝わっていないとしたら残念だ。

「女性に自由がない」

 この意見には、「男性にも自由がないよ。ほとんどの場合、働く事を強要されてる」というコメントがついた。漫画の中では、廊下で立ち食いをするタラオをサザエが叱ると、マスオが、彼もいずれは立ち食いそばを食べるサラリーマンになるんだからいいじゃないか!といった内容のことを言う場面がある。サラリーマンの悲哀は、昔より多少は多様化している現代よりも深かったのかもしれない。

「仕事しながら子育ては大変なのに社会制度、風潮、旦那は手伝ってくれない。子育てや家事やるのはママだけじゃない世界に行きたい」

 この意見には「サザエさんのような家庭なら、サザエが働くことも容易だと思うけど」というコメントがついた。サザエが働きに出ても、タラオはフネに見てもらえるし、カツオやワカメという遊び相手もいる。ご近所とも仲が良いし、サザエ自身もまだ24歳だ。そう考えると、働こうと思えば周囲のサポートがあり、これからキャリアを積むだけの時間もあるサザエはやはり恵まれているのかもしれない。

 漫画に罪はないものの、ここまで有名な一家だと議論の対象とされやすい。つけられたコメントから、現代の家族に対するさまざまな問題が見えた一方で、「ひとつを理想とするのではなく、多様なありかたを認めるべきだ」という声が強かったように思う。多くの世代が目にすることが前提だった新聞の4コマとして連載するのには3世代家庭が合っていて、ネタ切れにもならないなどの都合もあったのかもしれないが、連載開始当時は、やはり3世代2世帯家庭が時代背景とそれほど遠くなかったのだろう。これから漫画家が新聞で4コマ漫画を描き始める際に選ぶのは、どんな家庭だろう。それは、共働き家庭やシングルファザー家庭かもしれない。

(プレスラボ 小川たまか)