税務署に狙われたら終わり…8割超が追徴課税! どんな人が危ない?
大切な人を亡くした後、残された家族には、膨大な量の手続が待っています。しかも「いつかやろう」と放置すると、過料(行政罰)が生じるケースもあり、要注意です。本連載の著者は、相続専門税理士の橘慶太氏。相続の相談実績は5000人を超え、現場を知り尽くしたプロフェッショナルです。このたび、最新の法改正に合わせた『ぶっちゃけ相続「手続大全」【増補改訂版】』が刊行されます。本書から一部を抜粋し、ご紹介します。

税務署に狙われたら終わり…8割超が追徴課税! どんな人が危ない?Photo: Adobe Stock

税務署に狙われたら終わり…どんな人が危ない?

 本日は「税務調査」についてお話しします。年末年始、相続について家族で話し合う際、ぜひ参考にしてください。

 相続税の税務調査は「資産家だけが狙われる」と思っている人も多いのですが、実際はもっとシステマチックに行われています。令和6事務年度の実績を見ると、全国で9512件の実地調査が行われ、そのうち7826件(実に82.3%)で申告漏れが発覚しました。言い換えれば、一度税務署に目をつけられて調査に入られたら、8割以上の確率で追徴課税されるというのが現実です。

1件当たりの追徴税額は867万円!

 しかも、実地調査1件当たりの追徴税額は867万円にのぼり、軽視できる数字ではありません。では、税務署はどのようにして調査対象者を選んでいるのでしょうか?

背後にある巨大なデータベース

 国税庁には、「国税総合管理システム(KSK)」と呼ばれる巨大なデータベースがあります。このシステムには、日本国民一人ひとりについて「だいたいどれくらいの財産を持っているか」という情報が蓄積されています。例えば、以下のような情報が集まっています。

・過去の所得税や贈与税の確定申告の情報
・銀行口座の入出金履歴や残高、証券会社の保有株式・投資信託
・不動産の登記情報や評価額
・生命保険金の支払い状況

 さらに、国際的な情報交換制度CRS(共通報告基準)を通じて、海外の銀行口座や証券口座の情報も日本の税務当局に届きます。つまり、「海外に資産を移しておけば安心」という時代はすでに終わり、国内外を問わず財産情報はKSKに集約されているのです。

どんな人が狙われる?

 税務調査の対象者は、申告された財産額と、このKSKに登録されている情報を照合することで選定されます。例えば「申告された遺産総額が1億円なのに、KSKの情報から推測される資産は2億円規模に見える」といった場合、調査に入られる可能性が高くなるのです。

(本原稿は『ぶっちゃけ相続「手続大全」【増補改訂版】』の一部抜粋・加筆を行ったものです)