「言葉」が重視される時代

矢野 たとえば10年先を考えたとき、スピーチの持つ力や重要性はどう変化していくとお考えですか。

神田言葉が現実をつくっていく、最強のテクノロジーになるとさえ考えています。スマートフォンをはじめとする携帯端末が全世界に普及して、人々が「個」でつながりました。いままでとはまったく違った時代になるでしょうね。このように、新しいものをつくり出していく時代においては、実は言葉がとても重要な役割を果たすようになります。

矢野 たとえば?

神田 終戦直後、日本を代表する哲学者の西田幾多郎の全集を買い求めようとした人々が、書店の前に長蛇の列を成しました。また、吉田松陰が開いた読書会には、大勢の人が詰めかけたと言われています。
 いずれにしても、新しい時代が切り開かれるときには、言葉を使う人が注目されるということです。まさにいまが、そういう時代ではないでしょうか。

矢野 いまの時代、これからの未来を切り開くには、直接語りかける、あるいは映像で語りかけることの違いはあるとしても、話すことが重要な意味を持つようになるのですね。
(後篇につづく)

<著者プロフィール>
矢野 香(やの・かおり)
スピーチコンサルタント。信頼を勝ち取る「正統派スピーチ」指導の第一人者。
NHKキャスター歴17年。おもにニュース報道番組を担当し、番組視聴率20%超えを記録した実績を持つ。大学院では、心理学の見地から「話をする人の印象形成」を研究し、修士号取得。
現在は、国立大学の教員としてスピーチ研究を続けながら、政治家、経営者、上級管理職、ビジネスパーソン、学生などに「信頼を勝ち取るスキル」を伝授。
相手に与える印象の分析・改善力に定評があり、話し方・表情・動作を総合的に指導。全国から研修・講演依頼があとをたたない。
著書に、ベストセラーとなった『その話し方では軽すぎます!――エグゼクティブが鍛えている「人前で話す技法」』(すばる舎)などがある。
【著者オフィシャルサイト】http://www.authenty.co.jp