創続総合研究所

引っ越しをして
小規模宅地特例を活用

 一方で、節税のためのアパート建築が裏目に出てしまうケースもある。

 「アパートへの投資で資産を増やしてみませんか。節税にもなり、この土地ならかなりの家賃収入が期待できます」

 高橋博之さん(仮名・63歳)は4年前、不動産会社の甘い言葉に乗せられ、持っていた空き地にアパートを建てた。手元の現金は少なかったが、アパートローンを借りたいと電話すると、すぐに銀行員が飛んできて融資を受けることができた。

 近くに大学があるため契約を見込んでいたが、5部屋あるアパートで埋まったのは1部屋だけ。その部屋に住む学生も、来年卒業し空き部屋になる予定だ。

 仮に今後部屋がすべて埋まり、家賃収入が増えたとしても、アパートローンが15年近く残っている。ローンを完済するまでは子どもに贈与できない。

 建物の修繕など維持費を払うのも厳しい。更地に戻すための費用を捻出するため、高橋さんは銀行の定期預金を解約しようかと考えている。

 こうした事例は少なくない。節税ということだけに目が向いて、リスクを過小評価してしまうことが最大の原因だ。アパート経営は投資ではなく、あくまで事業という認識が必要だ。

 都内近郊などで広い土地に住んでいる人は、都心部に住み替える時に特例を使うことで節税につなげる手法がある。

 関東近郊に住む橋本健造さん(仮名・70歳)は、今の土地に40年以上住んでいる。

 2000平方メートルを超える広大な土地だが、半分以上は足を踏み入れることもなく、自宅前の道路に面した一部を庭として使っているだけだ。

 最近になって近所にあった食品スーパーがなくなり、買い出しをするのに街中へ出る機会が多くなった。ただ先日足を痛めてしまい、バスなどで外出するのも苦労している。

 都内で仕事をする長男は、来年初めに子どもが生まれる予定。現在はオフィス街に近い賃貸マンションに住んでおり、新しい家を探しているが、いい物件がなく苦労しているようだ。

 そのため橋本さんは、長男夫婦との同居を見越して、都心部に引っ越すことにした。

 こうした場合、小規模宅地等の特例を活用すると、相続税の評価額を大幅に圧縮することが可能だ。

 今の土地は2400平方メートル。特例を使えるのは上限240平方メートルのため、土地全体の面積のわずか10分の1だ。評価額は1億8400万円に上る。

 この土地を売り、都市部にある240平方メートルの土地に住み替えれば、全面積に特例が適用される。そのため、同居親族への相続時には評価額が80%減額になる。評価額は4000万円で、地方の土地に比べて評価額を約8割減額することができる。

 このほか土地には相続税の評価額を計算する上で、さまざまな制度が用意されている。いびつな形をした「不整形地」では、長方形になるように補助線を引き、土地がない部分を「陰地」としてその割合によって評価額を減額できる。

 保有する土地はできる限り空き地にせず、さまざまな制度とそれに伴うリスクを見極めながら、対策をとっていこう。

 

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週刊ダイヤモンド編集部


もめる相続

日本では毎年約110万人が亡くなる。このうち相続税が課される人はわずかで、これまで相続はどこか他人事でもあった。だが、相続税の大増税が決まった今、この状況は大きく変わる。相続発生時に申告が必要な人は大幅増。首都圏では約4割に達すると見込まれている。これまで資産課税に無縁だった一般家庭こそ、ムダに税金を払わない工夫の余地が急がれる。

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