十和田湖より大きいのになぜ?
青森県民も知らない“秘境の湖”
しらうお漁獲量日本一を誇る、青森県東部に位置する小川原(おがわら)湖。
「周辺を八甲田山系の豊かな自然に囲まれた湖は、海水と淡水が微妙に交じり合う汽水湖。ミネラルをたっぷり含み、豊富な水産資源に恵まれているんです」
そう語るのは青森県東北町・小川原湖漁業協同組合の市場課・生産課課長の鶴ヶ崎昭彦さん。
全国一の漁獲量である、しらうお、わかさぎ、そして大和しじみや、天然うなぎ、もくずがになど、小川原湖の多種多様な魚介類が、古くから地域の生活や文化を支えてきた。多くの水産物が獲れるため、「地元では宝湖とよばれています」と鶴ヶ崎さんは胸を張る。
じつは小川原湖のことを、まったく知らなかったのだが、どうやら凄い湖らしい。
ところで小川原湖の大きさは、青森県内にある十和田湖や十三湖の次くらいでしょうか?
「とんでもない!」鶴ヶ崎さんの声が大きくなる。「次もなにも青森でいちばん大きい湖です! 東北地方でも猪苗代湖の次に大きい。日本で11番目に大きいんですよ!!」
いきなりの「大きい」三連発。面積は63.2キロ平方メートル。浜名湖並みである。小川原湖は大きいのだ。
す、すみません…。
鶴ヶ崎さんが「ですよね…」と、ため息をつく。「全国的に知っている人も少なければ、実は青森県民でも小川原湖を知らない人がいるんだよね。県民ですら湖の名前を読めないし、書けない。こがわらこでもなければ、小河原湖でもないし」と、あきらめ顔。そもそも周囲には観光スポットはなく、八戸エリアから、青森エリアへの「通過地」。過去には「知事まで存在を忘れていた」というエピソードまであるらしい。
じつは小川原湖には、湖でありながら、れっきとした住所まである。
「小川原湖191番地」。
住所もあって県内一、日本でも大きく、資源の宝庫、さらには漁獲量日本一の魚がいるのに「秘境状態」。
誰も知らない宝の湖。
このあまりの「知名度のなさ」が、小川原湖の漁業にとって深刻な問題となっていたのである。