以前、当コラムで、前期はミクロ経済学に相当の時間を費やした、という話をしたが、その次に苦労したのは「確率・統計」の授業であった。そう、高校の数学の授業でもやったあの「確率・統計」である。「ABCDEの5人のうち3人を選ぶ方法は何通りあるか?」という質問を聞くと、「ああ、そんなのやったな」と思いだす人も多いに違いない。しかし、なぜファイナンスの大学院で「確率・統計」なんだと疑問に思う人も多いだろう。しかも、この「確率・統計」の授業は必修科目なのである。
株価と為替は
どの程度連動しているのか?
実は、ファイナンスや経済学においては、上記のような順列の問題より、統計分析の手法を身につけることが重要となる。
たとえば、メディアで株価の動きを解説する人たちは、「株価と為替の値動きは連動する」、「株式市場と不動産市場は連動する」というセリフをよく使う(自省をこめて)。そして聞く側もそれを当然のこととして受け止めているが、果たしてどれぐらいの割合で連動するのだろうか。100%なのか、半分ぐらいの50%の割合なのか。また、株価が1%動くと為替は一体いくら動くのだろうか。
これらの問いに少し考えを巡らせると、「株価と為替の値動きは連動する」、「株式市場と不動産市場は連動する」というセリフがいかに曖昧で説得力に欠けるかを認識することとなる。
過去の株価、為替、地価の動きを分析すると、「株価が1%上がった時にx%の確率で為替はy%だけ動く」ということが言えるようになる。そうやって過去のデータを統計的に分析する手法(回帰分析や仮設の検証)を学ぶのが、「確率・統計」の1つの内容であった。
株価は様々な要因で動いており、その様々な要因がどの程度株価にインパクトを与えるのかを分析したいという投資家は多いはずだ。その際には、回帰分析を行うこととなる。そう考えると確かにファイナンスを学ぶ上で、統計は必要だと理解できる。しかし、すぐにはファイナンスと統計が結びつくということは認識できない。
統計分析は
仕事で使える重要なツール
実はこれはファイナンスに限ったことではない。特に文系学部出身の人たちにとって、仕事で重要なスキルは営業、企画、コミュニケーションやプレゼンテーションスキルなどであり、それらのノウハウが書かれた本は書店にたくさん置いてある。よもや統計が仕事に役立つとは思わないのだ。