認知症のケアは難しく、家族だけでなく施設でも受け入れに難色を示していたこともある。

 グループホームの職員配置は日中3対1。つまり利用者3人に対して1人の職員が付く。ローテーションを組むには入居者9人に対してほぼ同数の職員が必要となる。一方、同じように高齢者が暮らす特別養護老人ホーム(特養)では、やはり3対1の職員配置。だが、日中でなく利用者全員に対する比率だから、夜勤者や泊り明け職員を含める。従って、日中の職員配置は7対1や8対1とかなり少ない。

 グループホームが相当に手厚い職員配置となっているかは明らかだ。それだけ充実した生活支援、とりわけ個別ケアが実現できる。認知症ケアは100人に100通りのケアで臨まねばならない。個別ケアにどれだけ近づけるかがより良いケアに欠かせない。特養より評判がいいのは、こうした仕組みがあるからだ。

 福祉の主役だった社会福祉法人以外にも参入が認められたことで、建築や不動産業者など土地を確保しやすい事業者や教育、飲食業界など全くの域外事業者も積極的に進出してきた。介護報酬が高額に設定されたこともあり、新規参入事業者が2棟目、3棟目を開設、チェーン展開を目指す事業者も各地で登場してくる。

 地域活動に熱心な地元のNPO法人が、「最も支援を待ち望んでいる認知症の方を手助けしたい」との強い思いからグループホームに着目して参入するケースも少なくなかった。草の根の住民運動が開花し、その共鳴者がまた新規開設に向かう。

 日本のグループの中には、本家の北欧を追い越すほどの優れたところが多い。入居者と一緒に商店街やスーパーに出かけて食材を購入し、職員と並んでキッチンに立って調理を行い、食後には食器の後片付けもしてしまう。自宅での暮らしと変わらない生活を続ける。これこそが認知症ケアである。欧州諸国のグループホームでは見られない営みだ。日本の傑出した手法だろう。「食」への関心、こだわりが欧州よりはるかに勝る日本人ならではのケア手法である。

「寄り添うケア」を掲げて運営するNPO法人のグループホームには、こうした日々の暮らしを尊重する志向が強い。いわゆる「生活モデル」の構築である。

 暫くは「グループホーム・ラッシュ」と言われるほど全国各地に広がった。厚労省の開設計画を上回る勢いである。スタートして3年余りで3300ヵ所に達し、「5年後に3200ヵ所」の目標を早々と超えてしまった。

 4、5年目に入ると、あまりの急増に対して「ケアの質」を問われ出す。「これまで福祉の「ふ」の字も知らない事業者がどっと入ってきた」「地主を説き伏せ、儲かる商売と勧誘して開設した」など、従来の福祉事業者からの反発も出てきた。

5ユニットを止め「量」の規制へ
入居者数を18万人に留める「元凶」とは

 その多くは、新規事業への関心、意欲に欠ける社会福祉法人関係者からだが、厚労省としても「量から質への転換」に乗り出さざるを得なくなる。そうしたなかでまず、「量」の規制から着手した。

 1ヵ所で最大5ユニットまで認めていたが、3ユニットに縮小、その後2ユニットまでとさらに規制を強めた。ユニットとはグループホームの単位のこと。1ユニットの入居者は9人まで。実際は、基準が3人ごとに設けられているため6人か9人で運営されるが、6人では採算がとり難いので事業者の大半は9人形式を選ぶ。